そういう問題じゃなくて


「いやー!返してぇ」

「お前はリボンつけたって可愛くないんだよ」

「だから俺たちがとってあげてんの!」

「返してーっ」

「うるせぇ!・・・・って不二、どけよ」

「・・・・」

「だまってんなよ!」

「・・・・名前ちゃんを、いじめるな」





今思えば、ほんとに些細なことなんだ。でも、当時の私はすごく悪質ないじめを受けているように思っていた。

その時に守ってくれたのが不二君。
たまたま家が近くて仲良くしていた私の王子様。



今彼は、青春学園というちょっと恥ずかしい名前の私立に通ってテニス部に所属している。
「青学の天才」だなんて言われて、普通の公立中学に通っている私にも噂が聞こえるほど有名になった。

私の王子様は、皆の王子様になった。





「名前―、今日は何月何日でしょう?」

「・・・2月29日。不二君の誕生日だよ」

「正解っ。アンタまたプレゼント渡さずにあんな悲しいことするわけ?」

「・・・・不二君は、私のことなんてもう忘れてるよ」





私は不二君のことが忘れられない。これが俗に言う「恋」なのかも知れないけど、ちょっと違う気がする。

昔助けてもらったから忘れられない。・・・・そう、不二君は私の恩人だから。



そんな中途半端な私は4年に一度、彼の誕生日はプレゼントとケーキを買って、家で一人で過ごすのだ。

未練がましいとは思う。でも、会って渡す勇気はない。

不二君にとって、私はただの幼馴染だから。





「・・・・名前、あれ、不二じゃない・・・・?」

「え、」

「ほら、絶対そうだよ!早く行ってきなっ」





私はお節介な友達の馬鹿力によって無理矢理教室から押し出された。

でも、確かに教室から見えたのは不二君だと思う。

私の記憶の中よりも身長が高くなって、ちょっとかっこよくなってた。
でも、私が好きだった栗色の髪は変わってなくて、ちょっと嬉しかったり。

にやける顔を引き締めながら、校門へと走った。











「はぁ、はぁ、・・・」

「そんなに焦ってこなくてもよかったのに。・・・・久しぶり、名前ちゃん」

「ひ、さしぶり・・・っ」





会いたい、とか忘れられたくない、とかいろんなことを思ってたのに、いざ会ってみるとすごく緊張して、何を話せばいいのか分からない。





「・・・好きだよ」

「、何が?」





ずっと無言だった不二君が突然しゃべったと思ったら意味が分からない。

好き?何が?





「名前ちゃんのことが」

「・・・・」

「ねぇ。誕生日プレゼントのかわりにさ、ちょっとだけ、抱きしめてもいい?」





だれもが無条件に頷くような甘い笑顔でそう言った不二君。

そんなこと言われたら・・・、





「む、無理!プレゼントなら家にあるから、だ、抱きしめるのは・・・」

「なんで?」

「・・・っ心臓がバクバクして倒れそう・・っ」





多分私の顔は真っ赤だろう。不二君は優しく微笑むと耳元でささやいた。





「倒れたらちゃんと看病してあげるから」


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