*時系列は気にしたら負け


晴れた春の日の午後というのは、誰しも睡魔に誘われるもの。

人一倍ひねくれているナメ郎とて、それは同じだった。

ましてや、何もないこんな緑の野原で、鳥のさえずりなんて聞こえようものなら。

しばらく足を進めていた彼であったが、あまりの眠気にその歩を止めた。

この旅に急ぐ理由はない。

ならば、少しくらい休憩してしまおう。

そう考え、道から少し外れた緑の傾斜に腰を下ろした。

誘われるままに寝転がってみれば、背中に感じる地面の固さなど気にならない程の心地よさ。

ひと眠りするか。

大きく息を吐き出して、瞼を閉じようとしたその時だった。


「ナメっちーーー!!」


聞き覚えありすぎる声が耳に届き、瞼は開幕を余儀なくされた。

起き上りこそしないものの、その顔には不機嫌が貼りつく。


案の定、自分の隣に腰を下ろしたのはポコミだった。


「ナメっち、お昼寝?」

「見りゃ分かるだろ。」

「あは。何だか不機嫌そうだね。」

「誰のせいだと思ってんだよ。」


彼の睨みにも動じない彼女は、また笑顔を浮かべる。

太陽が良く似合う笑顔だった。


「いいな〜。ポコミも一緒にお昼寝する!」

「願い下げだ。お前うるさいんだよ。」

「えぇ〜!?そんなことないよ。」


「ポコミ、お利口に出来るもん。」と頬を膨らませる姿は子供そのもの。

「はいはい。」と話を打ち切り、ナメ郎が寝がえりを打とうとした時だった。


「それじゃあ、ポコミがナメっちの安眠をサポートしてあげるよ!」


妙に自信に満ちた言葉に、ナメ朗は寝返りを中止しポコミへ視線を投げる。


「…殺すなよ?」

「殺さないよ!そっちは永眠だよ!」


またもプリプリと怒りだしたポコミだが、ステッキを取り出した。

目をつぶり、ステッキを数回まわしてから、空に向かって突き出す。

すると、


空に無数のシャボン玉が浮かびあがった。


「…なんだこれ?」

「あは。いいでしょ?」


そう言うと、ポコミも寝転がった。


「お空に浮かぶシャボン玉って、見てたら何だか眠たくなっちゃうし、素敵な夢が見れそうでしょ?」


そう言って、そのままナメ郎との距離を詰める。


「ひっつくな。」

「いいじゃん。ポコミと一緒ならもっといい夢見られるよ!」


言葉では拒否を見せるものの、彼はそこから動こうとはしなかった。


「…綺麗だね。」


「フン。」と素直じゃない肯定の相槌を送った彼は、また瞼を閉じた。


春の日の、微笑ましい昼下がりの話。



水玉模様の子守唄


「…おい。ポコミ。」
「………。」

「何で俺より寝るの早ぇんだよ。」


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -