「み、緑間くん! すっ好きです!」
一世一代の大勝負。
私は今好きな人に告白している。
あんなに練習したのに、頭は真っ白で何を言うつもりだったのか忘れてしまうし、緊張しすぎて声も身体も震えてしまって噛みまくるし、散々だ。
なんてありふれた言葉。
こんな使い古された色気も素っ気もない言葉で気持ちが伝わるわけない。
すごく陳腐な告白に絶望して思わず俯いてしまうと。
「お、オレも、なのだよ」
途切れ途切れのその言葉に、私はバッと顔を上げた。
見上げた彼の顔は、私に負けず劣らず真っ赤で。
そんな、まさか信じられない。
こんなご都合主義の奇跡なんてあっていいものなのだろうか。
まるで安っぽい携帯小説のようだ。
面白みも何もないそんな陳腐な言葉だけど、私にはその言葉が夢みたいでますます頭の中が真っ白になっていく。
「そ、そうなんだぁ…………えっと、じゃあ、付き合う?」
なんて間抜けなセリフ。
「そ、そうするか」
それに対する返答も間抜けだ。
もしこれが月9だったりしたら、私はすぐさま見るのをやめる。
ドラマの告白だったらもっとロマンチックでキラキラしてるのに、私たちときたら。
お互い顔を真っ赤にしてもじもじしているだけだ。
セリフもありふれた陳腐なものばかり。
こんなんじゃ視聴者は満足しない。
「つ、付き合うって、具体的に何をすればいいのかな」
ああ、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
いきなり何を言い出すんだ、私の口は。
緑間くんと付き合いたいってずっと妄想してきたくせに。
2人きりでお出かけしたり、手を繋いだり、抱きしめあったり。
もっともっといろんなことを妄想してきたくせに、具体的には何を、なんて今さらすぎる。
そんな今さらなことを尋ねてしまうくらい混乱していたってことで勘弁してほしい。
この夢みたいな状況と使い古されすぎて逆に使わないような陳腐な言葉の羅列のせいで、いっそ軽いパニック状態ともいっていいほどの私に、追い討ちをかけるように緑間くんは真っ赤な顔で、とんでもない言葉を投げつけた。
(きっキスをするのだよ)
(え!? ちょっ、とりあえずキスとか、えっ、早い、そんな、心の準備がっ!)