苦しい。
息ができない。
酸素を求めて口を開くも、その隙すら奪われてしまう。


「んっ…………」 

苦しい、と訴える手も彼、赤司くんに抑え込まれてしまって、私にはもう為す術がない。

苦しい、苦しいと意識が朦朧としかけたとき、唐突に解放されて流れ込む酸素にむせる。


「っ………げほ! っは……ぁ……」

生理的な涙が頬を伝った。
その涙を、1人では立つことすらできない私を支える彼の舌が拭う。


「苦しいのか」

「当たり前……でしょ………!」


涼しい顔の彼を睨みあげるも、こんな息も絶え絶えの状態じゃ迫力なんかない。
それでも彼を睨み続ける私を見て彼はふっと笑った。


「そんな可愛い顔をして、誘っているつもりか」

「えっ、違、」

「違うのなら、なおさらタチが悪い」


そう言って笑った彼の唇が、再び私の呼吸を奪った。

「っは……………」


すぐに唇をこじ開けられ、舌が滑り込んでくる。
くちゅり、といやらしい音が響いて私は耳の代わりに瞳をぎゅっと閉じて塞いだ。


赤司くんのキスは、深く長い。
私の全てを呑み込もうとするようなそんなキスに、私はまんまと全て奪われる。
呼吸も、思考も、感情も全て。


「ふ、はぁ…………っ」
「…………もっと、だ」
「っ……………は」


奪われると同時に与えられる。
唾液、呼吸、そして彼の感情。

けして等価交換ではない。
私は一方的に奪われ、そして一方的に与えられる。
与えられすぎて、私は苦しい。




(この息苦しさこそが、私が愛されてる証)



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