「キミのことが大嫌いですよ」
そう囁く声はあくまで優しく。
私はその言葉が嬉しくて、ふふっと笑みをこぼした。
「そんなこと言ってくれるのは黒子くんだけだよ」
そう、黒子くんだけ。
自分で言うとアレだけど、どうやら私は可愛いらしい。
人に好かれる顔というのか、不思議と男女ともに私を好いてくれる人は多い。
特に男子からはすごく好かれていて、今まで何人に告白されたか分からないくらいだ。
皆、口をそろえて言う。
「好き」とオリジナリティのない言葉を。
「好かれるのって、怖いよ」
私はぽつりと呟いた。
贅沢な悩みだってことは分かっている。
それでも、私は怖いのだ。
私は何もしていないのに、人から与えられる無条件の好意。
何故私は人に好かれているのか、私には理解できない。
「でも少なくとも、ボクはキミを嫌っていますよ」
落ち込む私を慰めるような、そんな表情で彼はそう言う。
そっと肩に置かれた手も優しい。
それはまるで、私を「好き」という人たちと同じ態度なのに。
言葉だけが私を「嫌い」だという。
(彼に嘘をつかせる自分が嫌いだ)
(それでもその嘘に気づかないふりをする私は、彼の優しさに甘えているんだ)