梅雨<青峰の場合> Sunny spell during rainy season



「っらあっ!!」

バシュッと気持ちのいい音をたててボールがネットをくぐり抜けた。
私は荒い呼吸を整えながら青峰くんをねめつける。

「もう少しくらい手加減してくれたっていいじゃない」
「ばぁか、これ以上どうやって手ぇ抜けっつうんだよ」

青峰くんがボールを拾いながら意地悪く笑った。



梅雨は雨雲が地上を覆う。

その雲の合間を縫って射し込む晴れ間に、青峰くんと私はストリートで1on1をしていた。


つい数時間前まで降っていた雨のせいで、地面には水たまりができ足場は最悪。
体育館でさえ適いっこないのに、ストリートなんて青峰くんの独壇場に立つともう私の出る幕はない。

今日はまだシュートを撃つことすらできていないのだ。
ひどい有り様。



「くーっ、もう一本!」

私が人差し指を立てると、青峰くんはニヤニヤ笑う。

「やめとけやめとけ。今日のこのコンディションじゃムリに決まってらぁ」

「ムリじゃない! やるの!」


私がむきになると、青峰くんは笑いながらボールをくれた。


「わーったよ」

そしてディフェンスの体勢をとる。

私はドリブルしながらどちらに抜けようか考えた。


今日は水たまりのせいでボールのバウンドが悪い。
つまりドリブルのコントロールが効きにくい。

左を抜くならボールの持ち替えをせねばならないが、今日の状態では持ち替える際に手を滑らしかねない。


向かって右を最短距離で抜く!

私は一瞬左に重心をずらし、視線のフェイクもいれ、次の瞬間には右に足を踏み出していた。
だが。 



「わ、あっ!!」

ずるっ

「おい!!」


踏み出し方が悪かったのか、私の右足は綺麗に滑り、身体が浮いて後ろに体重が流れる。

地面はコンクリート。 
やばい、と思って目を瞑ったが、衝撃はいつまでたっても訪れなかった。


「てめぇ何してんだバカ!!」

そのかわりに頭上から怒鳴り声が降ってくる。
おそるおそる目を開けると、青峰くんの顔が近かった。

「わっ」

驚いて飛び退こうとしたが、腰をがっちりホールドされていて身動きがとれない。

抱きしめられてる、と気づいたときにはもう遅かった。



頭を抱えこまれ、彼の胸に押しつけられる。
それはもう痛いくらいに。

「い、痛い痛いっ」

訴えながら身じろぎするが、離すどころかますます強く抱きしめられて息が苦しい。

「あ、おみね、くんっ」

息も絶え絶えに彼の名を呼ぶと、青峰くんはパッと私を離した。
 

そして落ちていたボールを拾い私に背中を向ける。



「帰るぞ」
「えっ、でも」

唐突すぎて私が抗議の声をあげると、彼はじろりと私を睨んだ。

「てめぇに怪我されちゃこっちが困るんだよ。今日はもう終わりだ」


そう言って彼は私の手を握った。
ギュッと握る手の強さが彼の心配を表すようで、私は何となく嬉しくてコッソリ笑った。



(とりあえずシャワー浴びたい)
(いれてやろうか、身体洗ってやるよ)
(バカ!!)


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