梅雨<緑間の場合> Under one umbrella



ビュッと強い風が吹きつけた。

「うわっ」

ボキッと嫌な音がして隣を見ると、緑間くんの折りたたみ傘が無残に折れ曲がっていた。

「………入る?」
「…………お願いするのだよ」

私の傘をさしかけると、緑間くんはバツが悪そうな顔でそっと入ってきた。

背の高い彼のために私は傘を上に持ち上げる。



「これだから折りたたみ傘はダメなのだよ」

緑間くんはぶつぶつと文句を言いながら折りたたみ傘を何とか畳む。

「今日は朝から雨の予報だったのに、何で折りたたみ傘なの?」

私は至極まっとうな疑問をぶつけた。


この雨は昨日から降り続いていて、しかも台風が近づいているらしく風も強い。
普通の傘でも飛ばされてしまいそうなのに、耐久性の低い折りたたみ傘で来るなんて無謀もいいところだ。


「今日のラッキーアイテムが折りたたみ傘だったのだよ」


ああ、と私は肩を落とす。

おは朝信者の彼はラッキーアイテムがないと1日を過ごせない。


「じゃあ今日はあんまりラッキーじゃなかったね」

私が苦笑いしながら言うと、彼はチラリと私を一瞥して言った。

「いや…………ラッキーだった」
「え?」
「……………何でもないのだよ」


緑間くんはふいと目をそらすと、照れ隠しのよう私の手から傘を奪い取った。


「あっ」
「オレが持つ。さっきから頭が当たっているのだよ」
「……ごめんなさい」

謝りながらも、助かる、と思う。
190センチもある彼に傘をさしかけるのは相当に疲れるのだ。

疲れた腕を揉みほぐしていると、いきなり彼にぐいと肩を抱かれた。

「へっ!?」

急に密着し、顔に熱が集まる。

「肩が濡れているのだよ」
そう言って緑間くんはそっぽを向いた。


「あ、ありがと………」

気を遣われているのだと思うと何となく照れくさい。
私が俯くと、緑間くんは肩を抱く手に力を込めた。

もう肩は雨に濡れてはいなかったが、何となくまだくっついていたくて、私はすりっと緑間くんの胸に小さく頬を寄せた。



(2人とも、もう雨やんでますよ)
(うわあっ!?)
(くくくくく黒子!! お前ななな何をしているのだよ!!!!)
(こちらの台詞です。雨も降ってないのに肩抱きながら相合い傘なんて………)
(わー!! わー!!)


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