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金色に輝く午下がり
ぼくらときたらのんびりもいいところ
おさない腕にゆさられて
話すことも なかなか思うにままならない
「不思議の国」へ行ったおはなし
兎穴を落っこちて
お伽噺というには
少しばかり 厄介なお話し
―――――…
side.ツバキ
お昼休み、あたしは生徒会室にいた。残っている仕事をやるために自分の席に座って、面倒臭いって思いながら。
目の前には、補習に向けて 勉強をして魂が抜けかけているナツ
何の変哲もない 普段通りの毎日。
でも、今日は違ったらしい
『……アレ?ねぇ、ツバキ、ツバキ』
『何』
『アレ、兎だよね?あの中庭にいるの。』
ナツの唐突な言葉に何事と、後ろを振り向くと、そこには確かに白兎がいた。
まるで、あたしたちが気づくのを待っていたみたいに、あたしたちが気づいた途端、そいつはぴょんぴょん跳ねて、中庭の奥へ消えていく。
ここは無駄に豪華な校舎で、中庭も外国かってくらい絢爛豪華……とにかく広い。
だから、あんなちっこい兎を見失うと探し出すのは困難になる。
『飼育小屋から、逃げ出しちゃったのかなー』
『だろうな。行くぞ。』
『え、ドコに!?つか、そこから!?』
窓の桟に足をかけて出ようとすれば、ナツが大袈裟にリアクションする。
『見失ったら面倒だ』
『うへー…リョーカイ』
あたしがヒョイッと外へ出れば、ナツも苦笑いしながら外へぴょんと出た。身軽なやつだよ。
『アッチだね!』
『ああ。』
意外と乗り気だったらしい。だっと走り出したナツの後ろをあたしは駆け出した。
白兎を追いかけるために。
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