番外編 | ナノ

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――今は、夜中の2時くらいだろうか



同室の嵐詩はさきほど悟浄たちと騒いでいたせいもあり、もう寝てしまっている。

なかなか寝付けない冬夜は、寝返りを打ち、窓の外を見た。
それなりに大きいこの街は、所謂眠らない街らしく、まだ賑やかだ。



―――駄目だ、寝れない。少し散歩でもしてこよ




冬夜はベッドから立ち上がり、タンクトップの上にカーディガンを羽織って外にでる。




『なんかあるかなぁ』




――…そうやって気まぐれに出かけたことが、まさかあの人に会うことになるとは思いませんでした





――
――――


夜中なのに道は人で混み、すれ違うたびに様々な酒や煙草や香水の匂いが鼻を刺激する。




「こんな時間に女の子が1人で歩いてちゃ危ないよー?」



なんの気配も無く、冬夜の肩を抱いた彼は耳元で囁いた。
冬夜はびくり、と肩を揺らせ、恐る恐る横を見る。




『な、んで……』

「少しお話しない?冬夜チャン」



目は笑っていない笑顔の烏哭が、信じられないと目を見開いて立ち止まっている冬夜の肩を抱いたまま路地に引っ張っていく。
冬夜は、たどたどしくそれについていく。



『答えて、なん…で』

「相変わらず美人さんだねぇ、冬夜チャンは〜」

『師匠っ!!』



答えようとしない烏哭に対し、冬夜は苛立ったように声を荒げて烏哭のほうを見る。
烏哭は冬夜のほうを一切見ずに前だけを見ていた。





「少し散歩でも、しようか」





その言葉を言った瞬間、冬夜と烏哭は闇に包まれ、次に視界が開けたとき そこは目の前に海が広がる砂浜だった




『え……海?』

「ちょっと散歩しよっかって言ったでしょ」


クスクス笑い、烏哭は砂浜に座った。それから隣をポンポンと叩き、冬夜に座れと促す。冬夜もそれに思わず従って座ってしまう。



『あ、』


思わず烏哭さんの言うこと聞いてしまった自分に呆れ、うぅと頭を抱える。




「ははは、で?なにから聞きたいのかな?」


よしよしと頭を撫でられて冬夜は体育座りをしたまま頭を自分の膝に押し付けた




『沢山聞きたいことがありすぎて……なにから聞いたらいいかわからないです』

「積もる話もあるだろうし、今夜は久しぶりに話そう」


ニコッと笑う烏哭の顔を横目で見た冬夜は思った



―――相変わらずだ



と。
気持ち悪いくらいに。
何故昔はこの人を信じ切っていたのか、今では不思議なくらいこの人が今は怖い。
いや、昔も怖いといえば時々怖かったけど
でも、怖いのに何故か安心する。




―――オレも相変わらずだなぁ




『雪夜はどこですか、』

「今も元気に過ごしてるよ、この世界でね」

『やっぱり、ここに居ますか――なら、見つけ出すのでいいです』


冬夜は顔をあげてふわりと笑った。それを見た烏哭は、拍子抜けしたように眉を八の字にする。





――相変わらず、雪夜くん好きだなぁ
てっきり、消えた理由とかまーその他様々な理由とか……なんでここにいるかとか聞かれるかと思ったけど

やっぱり、冬夜は雪くんの今ね。






「相変わらず、君たち双子は以心伝心なのかな?」

『なんとなく。生きてるのは感じてました…この世界に来てからは、強く。』

「ほんと、不思議な生き物だね、君たちは」


長く細い金糸の髪を梳いて、烏哭は面白そうに目を細めた。




「てっきり殺そうとすると思ったんだけど…」

『実力の差がわからないほどガキじゃありませんよ。』




―――今のオレじゃあ……まだ勝てない。この人には…


きっと、オレは殺される。





「懸命だね。ちょっと遊んであげようと思っていたけど、興を削がれちゃったし……」




冬夜が、ハッと隣を見ようとしたが、それは間に合わなかった。



もう景色は海ではなく、自分たちの泊まっている宿の屋根で



「また遊ぼうね、冬夜」



そう言葉だけ残して、烏哭はまた消えた。



『……』



冬夜は へたりと屋根に座り込む。



『なんなんだ、あの人は…』




と声に出しても返答なんてありもせず。力無く笑った。
カタカタと今更になって震え出した体を抱きながら。





ミエナイ、トドカナイ

(ねぇ、)
(呟いても返事はない)




fin




微裏は書けないので…申し訳ないですが。そして、どう足掻いてもちょっとシリアスになってしまうのは冬夜のせいなのか烏哭のせいなのか…。はたまた掛け合わせたからか(笑)
移転前ですが、匿名さんリクエストありがとうございました


20140124

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