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『川で洗濯するんだね…!』
先程の女性――旬麗に通された部屋で「とりあえずこれを着てね」と渡された服に着替えながら、那都は小さい声で冬夜に聞いた。冬夜は濡れた服を脱ぎながら、あーと頷く。
『確かに、オレたちの世界じゃお話の中でくらいですもんねぇ。川で洗濯』
『川上から桃が!』
『旬麗はバァさんじゃないだろ…』
『旬麗の場合は、俺たちが流れてきたわけか』
『これから鬼退治ーーなんてことにならないといいですよねぇ』
あっはっはっと4人で適当な会話をしながら、旬麗から借りた服へと着替える。
『お前が言うと本当にそうなりそうで嫌なんだよなァ』
ひとしきり笑ったあとでボソッと言う嵐詩に冬夜は苦笑い。
着替えの終わった4人の格好はこんな感じになっていた。(読まなくても問題ないよ byモコナ)
椿姫は、黒のハイネックのノースリーブにベージュのカーディガンとアイボリーのマキシ丈スカート
那都は、白いワンピース。那都のサイズにあうものがないので大きいが、袖をおって丈はロングになってるぐらいなので問題はなさそうだ。
嵐詩は、黒のVネックの七分丈Tシャツにこれまた黒の七分丈のズボン
冬夜は、白いオフショルダーのニットに黒いロングスカート
椿姫は 髪を1つ結いし、冬夜は団子状にまとめてあげている。一応、人の前ではぬいぐるみのフリをしているモコナのことは冬夜がわしわしとタオルで拭いて、そのまま抱っこし、4人は部屋を出た。
『旬麗、助かった。ありがとう』
『タオルもありがとうございました。』
旬麗のとこまで4人で行くと、その姿を見て旬麗はにこっと微笑む。使ったタオルはこっちに入れてっとカゴを見せた。
「ううん、サイズも……大丈夫そう、よかった」
主に那都が無事着られているのを見て、ふふっと安心した顔をする。那都は、はーい!と手をあげて『大丈夫ー!ありがと!』とアピールをした。
『俺らの着替えまで洗濯させることになって、悪ィな』
嵐詩は使っていたタオルを旬麗に渡しつつ礼を言う。旬麗は、いいのと笑ってタオルを受けとる。そんな会話をしている間に男性陣も4人も部屋に戻ってきた。
「あ そっちはタオル足りた?」
「助かりました。スミマセン 服までお借りして」
旬麗が貸した服を着た4人は、また普段と少し雰囲気が違って見える。
「ううん サイズがあってよかった」
『あ!さんぞー髪結ってるー』
那都がその結っている髪をしっぽーと触ろうとしたのを三蔵は鬱陶しげに避ける。
『(……一人暮らしだよな?なのに、この量の男物の服あるのか。彼氏でもいんのかね)』
そのわりに姿もなんも見えねぇけど…つか 若い女がこんな怪しげな一団招いてるのも大丈夫じゃねぇと思うけど、嵐詩はあらためて部屋を見渡した。八戒が持っていた使ったタオルも旬麗は受け取り、それも片付けたところでドンドンと強く扉を叩く音がし、「旬麗!アタシだよ 入っていいかい?」と声がした。
「あ おばさんだ。どうぞ!!」
旬麗はすぐに戸へ駆け寄り扉を開けると、そこには大きな鍋を持った明るそうなおばさんが立っていた。
『(近所付き合いもしっかりしてるんだな)』
椿姫にとっては、未経験でありよく知らないことであるご近所付き合いというのはこういうものをいうのかなと漠然と思いつつ、椅子に座って眺めていた。
「お隣の半おばさん、料理が凄く上手いんです」
「お昼御飯作ってきたよ!皆で食べとくれ」
旬麗が中に招きいれ紹介してくれた 豪快な雰囲気もある朗らかに笑う女性――半は、鍋をがぱっと開ける。美味しそうな匂いが部屋に漂った。
『スッゴい美味しそうな匂い〜!!』
「うまそー!これ喰っていいの!?」
さっそく食い付いた那都と悟空に半は喜んで「ああ、もちろんさ」と返す。目を輝かせて鍋を覗くちびっこふたり。冬夜に抱かれているモコナは、匂いだけでよだれを垂らしたので、冬夜はすっと静かにハンカチを取り出して拭いた。何事もないかのように笑顔で。
『わざわざお昼まで用意して下さって、ありがとうございます』
「いいんだよ 沢山食べとくれ!」
冬夜はご飯の支度のお手伝いします、とモコナを一旦那都へ渡して 手伝いに台所へ向かう。そして、遅まきながら三蔵一行の顔を確認した半は
「オヤまあ」
と感嘆をあげた。
「色男ぞろいじゃないか!!アタシもあと10年若ければねェ」
語尾にハートまでつけてポッと頬を赤く染め、そんな半に悟浄は馴れ馴れしくも彼女の肩に肘を置く。
「20年の間違いでしょ オバチャーーーン」
ベシン
間髪いれずに嵐詩は無言で悟浄の背中を叩いた。
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