孤独な華。 | ナノ

7/10

魔術講座@






ーーー今回は、悟空たちが合流してくる前の冬夜と那都の話。


『じゃあ、ここらへんでやりましょうか』

『はーい!』


最初こそ那都が手を引っ張っていたが、途中から冬夜があっちのほうに、と誘導して町外れの林にたどり着いた。ふむーーと冬夜は辺りを見渡すと


『ちょっとそこにいて下さいね』


と言い、少し進んだ場所で止まるとどこからか背丈ほどもある装飾のついた杖を出した。


『おおお?!魔法使いっぽい!!』

『ははっ、どうも。』


そして、冬夜は、その杖を自分の足元にトンっと置いた。すると、足元に光輝く陣が現れ、スーーッと冬夜の姿が薄れていって、消えた。
『えっ………え、え?!』
那都がとまどっていると、何もないはずの空間からはニュッと冬夜の顔が現れる。


『ギャア!!』

『えっ、ぎゃあは流石に傷つきますよ……』


那都の叫びにしょんぼりした顔をする冬夜はすぐに笑顔に戻ると、そのまま状態でまたニュッと現れた手を伸ばし、『こっちにおいで』と那都をひっぱった。
那都はしょんぼりした表情をみて『ご、ごめん』と謝るがそのまま誘われるがままに足を進めた。
その先に進んだとこで


『おおおおおお?!!なにコレ!?すっごい!!!』


と叫ぶ。そこは、ドーム状に透明なナニかで包まれている空間で、冬夜はその反応を面白そうに見ている。


『なんだコレ!!ふおおおおお!!すごいーー!!!』


那都は、その空間が面白いようで顔や手を出し入れしてキラキラした瞳ですごい、と繰り返す。しばらくは見守っていた冬夜だったがいい加減、というところではしゃいでいる那都の両肩を掴んだ。



『はーい、そこまで。そろそろ始めますよー』

『ハーイ!お願いしまーす!』




ーーー
『さて、この結界の説明も終わりましたし……あ、オレは残念なことに教科書通りには教えることが出来ませんから、ご了承下さいね。』


『おっけーですっ』


ビシッと見よう見まねの敬礼をして那都は答える。


『オレは、魔術を使う場合、さっきみたいに杖を使うこともあれば、別のものを用いることもあり、それは人によって様々です。水は儀式に使ったり、身を清めたりするのに使いますが……』

『ほぉーー……?』


フフと笑うと冬夜は手をヒラヒラ振って


『とりあえずそれは置いていて。魔術のイイ所は、自分のアイディア次第で応用が効くところだと思うですね。トリッキーなこともそうですし、武器がなくともなんとかなりますし、サポートも含めていろいろやれますし』


『ほーほーー!』

那都のわかっているのかないのか、そんな相槌に冬夜は『梟になってますねぇ』と笑う。


『ようは、イタズラから戦闘、治療に防御までやれますよーってことです』


ふふふふーと妖しげに笑うと那都の目はまた輝き、楽しそう!と顔に書いているようだ。


『オレは、昔から水と相性がよくってこんなイタズラをしてました』


というと冬夜はどこからかペットボトルを取り出した。


『これだと足りないなぁ』


そりゃそうだ、もう1本はまだ使えないしと冬夜は思いつつ、ペットボトルを開けてこぷこぷと地面に垂らした。
水は線となり地面に落ちていく。その線で地面とペットボトルが繋がっていくのだが、地面には一向に水溜まりか出来ることはない。
那都が、『あれ?』と首を傾げて水から目を離してそこにいる冬夜のほうを見る。


そこに冬夜はいて笑っていた。


『冬夜ちゃん、水どこいったの?』

『さぁて、どこでしょう』


那都は、また、あれ?と首を傾げた。目の前の冬夜の口は確かに動いていて、そこにいる。でも、声がそこから聞こえている感じがしないのだ。
目の前にいる冬夜も笑っている。声も愉快そうに笑っている。でも、それが那都の中で一致しない。変な感じがする。どこかが、なにかが、おかしい。

おかしいなっと那都が声が聞こえた気のしたほうを、自身の後ろのほうを見た。ーーそこにも、にこにこしている冬夜がいた。



『あっれえぇえええええ!?』

『あははっ!……那都は耳もいいですもんね、すぐ気づかれちゃったなぁ』


那都は驚いて首が変になるのではないかというくらいの勢いで、自分の前と後ろにいる冬夜を繰り返し見ている。
後ろの方にいた冬夜は、那都の横に歩きつつ、スッと左手を横に払った。すると、それに合わせてパシャンと水の音がし、那都はその音のしたほうであるもうひとりの冬夜のいたほうを見ると、そこには冬夜はおらず水溜まりだけがあった。



『ええええ…??どうゆう、な、ええ?』


なにがどうなっているのか、那都は混乱しているようで言葉もろくに紡げていない。
冬夜は水溜まりのほうへ歩いて、


『水でね、虚像のようなものを作ったんですよ』


と左手の人指し指をくるっと上へ向けると水が空中へと浮いて、今度は木々や草のほうに冬夜が指差すように動かすとそっちへと飛んでいき、水はまかれた。



『キョゾウ?』

『ん……?あ、あーー、水や反射のことは今度別で勉強しましょうね、那都なら知っててもいい年齢ですから…』


と冬夜は苦笑いして、パンパンと掌を叩く。那都は勉強という言葉に反射的に身を強ばらせるが、冬夜は気にせず進める。


『オレは、今魔術と水を使って、オレの偽物を作った、ってとこですね。昔はこれ使ってイタズラしててー』

『ふおおおお!偽物!分身の術だ!?』

『ははは、あれたと分身とまでは、精々鏡写しってくらいですが、まあまあ面白いでしょう?』

『面白い!!』

『よかった』

『ペットボトルの水だけでこんなことできるの?』

『いえ、それだけだと足りませんね。今は空気中の水分をだいぶ借りました。』

『空気中?空気ってこの空気?』

『そうそう、空気のなかには色んなモノがあって、水分もあるんですよねぇ……正確にはちょっと違うかもしれませんが。』

『見えないのに?』

『そうそう、沢山。今も目の前に色々ありますよ。』

『すっげー!!』


冬夜は両手をくっつけて空気を掬おうとする那都に微笑む。当たり前のようなとこなのに那都には、沢山の初めてがあって、新鮮なものなんだろうと。

ーーーオレも勉強し直さないとなぁ



『こういった遊びの延長戦のようなこともしつつ、習うより慣れろ、一緒に魔術に慣れていこうね』

『ハーイ!冬夜先生!』

那都は、元気よく返事をして手をあげる。


『保育園みたいだなぁ』

『せめて中学校とかさ!園児じゃないよ!!』


二人で冗談に笑いあっていると複数の足音、二人は目を合わせてその足音のしているほうを見た。


『み、見えてないんだよね?』

『ですよ、でも、コレ……皆でしょうね』

『……皆?』


那都はなんでこんなとこに?と首を傾かせていく。


「…あれー…ここなんだけど…」

「いねーじゃん」



『あ!』

丁度モコナを抱いた悟空を筆頭に皆が現れた。
キョロキョロ見ている皆をみて那都は、面白そうにそれを見ている。


『おお、本当に見えてない!なんか面白い!』

『バカみたいですよねー』

『冬夜ちゃん!』

『すみません……さ、折角ですし、オレがさっき引っ張ったように、悟空のこと中に入れてあげて下さい。』

『!!うん!』



二人での授業

(あっ!これ目の前で変顔したってバレない!)
(それ、バレたら叩かれますよー)




End...?


161014

← | →



back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -