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冬夜side
ここはオレたちの居たところよりは都会だからか、オレたちの居たところがド田舎だったからか……
とにかく、オレが見て育った空より星が見えない
ただの闇のようだ
今にも吸い込まれて、絡め捕らえられてしまいそうな……闇
そんなことを縁側でぼーっと考えていたら、那都が話があるんだけど、とおずおず隣に座ってきた。
『……あの、冬夜ちゃんは……妖怪、なの?』
キオクを取られて、意識を取り戻した那都とは、色々と話してはいるものの結構な距離を感じていたんですが…
今、理由がわかった。
そっか、オレ 今 妖怪姿でしたね(笑)
怯えた目、不安そうな姿
その中に嫌悪がないだけマシだと思う
純粋に怖がられることにも、オレはもう馴れてしまったから
『あぁ……妖怪ですね。今は』
『今は?』
『元々人間ですし、普段も人間の姿ですよ。』
自分では上手く微笑んでいるつもりだけど、那都からはどう見えてるだろう
怖くは…ないだろうか
『オレが、怖いですか?』
暫くの沈黙
つい聞いてしまった言葉
聞く気も無かったのに、こんなこと
肯定されたら、どう返そうか…
『……ううん』
返答は想像の逆だった
オレは思わず、那都のほうを見てしまう
那都は、オレの普段より少しだけ伸びた銀糸の髪をくいっ掴み、オレの赤と金の瞳を見て『綺麗だね』と笑った。
嫌な笑いじゃなくて、こっちが明るくなるような、暖かくなるような笑顔
『冬夜ちゃんは、優しいしお月様みたいで好きだよ』
キオクが無くても那都は那都なんだなぁ…
彼女もきっと、綺麗だ なんて笑いながら
オレの髪の毛を弄っただろう
『お月様、ですか』
あはは、と笑うと那都もまた楽しげに笑う
そんな頭をくしゃりと撫でて
オレは那都を抱き締めた
『わわっ!冬夜ちゃん?』
『ありがとう、ございます…』
『え、う…うん。』
―――この子を護りたいと、思ったのは初めてじゃない気がした
狐と猫の夜咄し
(まぁよくよく考えたら、那都が妖怪を怖がるわけなかったんですけどね)
End...?
20130729
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