11.アルティミシアとクラウド
鬼は追いかけられるから逃げて、けれど手を打ち鳴らすあれを諦めきれない。
絡め捕らえられて、垂れ流される情熱。

「とても、可愛らしい子に会いましたよ」
「へぇ…コスモスの?」
「ええ、長い黒髪の若さに溢れた…知っておいで?」

ピリ、ピリ、髪の間を風の猛攻が駆け抜ける。
怒りに似た、欲情、髪が逆立ちゾクゾクと皮膚が震えた。
剣を握るグローブに汗が染み込み、ひきつった音がすりきれる――これだ、この劣情。
追いかけて、追いかけさせて、魔女は笑みを絶やさず暗闇に引き入れた。

12.WOLとティーダ
神殿の朽ちかけた支柱を挟んで背中合わせ。
声を圧し殺して泣く君がかなしい。

「私が、悪かった」
「あんたはみんなのことばっかりだ!」

ぐずついた空模様。
はたはたと落ちる雨。
しかし君とて、みんなのことばっかりだ。

「…こっちに来てくれないかティーダ」
「い、や、だ!」

頑固な声色は崩れかけているのに、何やら恐ろしくてたまらない。
勇気とは、こういう時につかうらしい。

「君の涙を唇で拭いたい。私の我が儘を叶えられるのは君だけだ」

沈黙。
やがて、もー!と、憤慨した呻きが届いた。

13.セシルとライトニング
パッと見なよなよしい見目から時折伺わせる男らしさに心臓を奪われた気がした。

「お前は私を女として扱うな」
「ごめん、君は強いよね」
「そういう意味じゃない…分かってて言ってるのか?」
「……君も僕を男として接する、おあいこさ」

額に口付けを落とされる。
…あいこなもんか。
頬を往復する親指をはがして掌にキスをおとすと、困ったような笑顔が一層男に染まった。

14.ガーランドとバッツ
喩えば貴様を浚うだろう。
日の光りの見えぬ場所、風の通らぬところに押し込めるだろう。
世界には儂しかおらぬとするだろう。
それで、どうなる。
貴様は、儂だけを愛するか?

「今と何一つ変わんないよ。ただ世界の一つとして、あんたを愛するだけだよガーランド。試してくれてもいい」

バッツはまるで母親のように寂しく笑った。
多分、二人の愛の定義は永遠に交わらない。

15.暗闇の雲とスコール
逃げる、逃げる、スコールはこれまでをそうして凌いできた。
闘いならば立ち向かっただろう戦士の判断力はズタボロだ。
暗闇の雲は興味を持った存在を執拗に構いたがる。
しつこさが祟って逃げ回られ続けまる1日。
壁際に追い詰め追い詰められ、強張った口はぎゅっと結ばれている。
魔物は、愛しいと思った。
ほどくようにさらり唇を撫でて隙間を割る。
スコールはゾッと悪寒を感じながらも抵抗する理由を見付けられない。
ぬるり侵入する固い指先を大人しく受け入れた。

16.ジェクトと暗闇の雲
ふわふわと誘惑。
彼女にそんなつもりはないだろうが、滑らかな四肢がゆらゆら、宙を揺れるのだから腕が伸びるのは仕方ない。
捕獲完了。
しかしジェクトは不満だ。

「冷てぇ、ってかぬるいなおめぇさん」

後ろから抱き抱えて、頬で頬を押さえると、髭がくすぐったいなどと子供のようにケタケタと笑い、足をばたつかせる彼女。
大きな体は腕にはまったく収まりきらない。

「ならば精々温めてみせい、儚き幻よ」

わしにはお前に温度があることが不思議だと言って、暗闇の雲はジェクトに向かい合う。

17.WOLとカイン
爪先に口付けられ、熱が広がる。
耳の後ろが熱い。
空いている手でひやり冷ましながら、見上げてくる無表情から目をそらした。

「今度は頭が痛いのか?」
「痛くはない…どちらかと言えば熱、」

言うや否やおもむろに立ち上がりもう片方の腕も奪われた。
髪に、耳に吐息がかかる。
真面目な、実直な、男の、獣の、射る眼差しの…熱い――。

「…君の素顔を私だけのものにしたい」

くらり。
視界が解放されているにも関わらず景色は真っ暗に歪んだ。

18.ライトニングとティファ
イミテーションどもを蹴散らして、残ったものは仲間たちのへたれた姿。
ラグナなぞは顎を上げている。
先が思いやられるな、とライトニングが見回りに出ようとすれば、その左手をティファに掴まれた。

「私も一緒にいく」

艶やかだった髪を乱したまま、にっこりと笑う彼女の頬は赤い。
後ろではジェクトが行ってこい、と肩を竦めた。
全く、男どもは頼りにならない。
しかしライトニングの機嫌は下降せず、ティファの腰に腕を回して哨戒へといくのだった。

19.エアリスとティファ
とっても嬉しそうに頬をすりよせてくる可憐な彼女は、私の手をとってきゅうと握りしめた。
少し垂れた目尻が優しく細まって、誰かなんて聞くに聞けない。

「……アシストありがと…あなたは私を知ってるの?」
「どうかなあ、仲間だったら素敵だね」
「仲間、」
「あなたといると抱きつきたくなるんだ、不思議…ふふっ」

笑って、すぐさま実行に移すのが何でだかすごく羨ましい。
不思議、不思議、神秘で作られた女の子。
愛らしい表情、女の子のしぐさ、ほっそりした腕、全部全部が可愛い、可愛い…。
(私にはないものばかり)
心音が重なる。
離さないで、離れないで
(あなたといると安心するの)

20.ヴァンとラグナ
手を繋いだら、怯えられた。
それはまだいいんだけど、怯えたことを笑顔で隠された上に、固く握り返してきた。
そしてそれを全部オレに気付かせるんだ、この野郎は。

「ラグナ」
「えっと…ヴァン君、怒ってる?」
「別に」

可哀想だな、この大人サマというのは。
あるがままの空を、見ることが出来ないとしたら。
あんまりいじましいから、怒るなんか出来ない。

「なるべく、一緒にいようぜ」
「…」
「一人と独りでいいからさ」





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