花宵 | ナノ
「あの…綾芽くん…」
「なんだ、桐原か。…俺に何か用ですか、先生」
昼休み。
午前の授業が終わって、昼食をとる時間だ。
クラスのやつらはみんなお弁当をひろげている。
俺は今日は、次の授業の予習をするからご飯は食べない。
教科書とノートを広げて、予習をしていると、肩をつんつんとつつかれた。
振り返って見てみると、俺のクラス担任の桐原だった。
なにか仕事でも押しつけてくるつもりなのか。
そう考えていたら、全然違った。
「これ…お弁当なんだけど、桜沢さんが、綾芽くんに渡すの忘れたから、届けてほしいって」
「桜沢が?」
お弁当なんて、聞いてないぞ。
それに昨日、桜沢に弁当はいらないとちゃんと伝えたはずだ。
「じゃ、じゃあ、先生はこれで」
慌てて教室から出ていく桐原。
変な教師だな…。
それよりも、なぜ桜沢はわざわざ…
とりあえず包みをあけてみると、お弁当と一緒にカードがあった。
―私が作ったお弁当なんだけど、よかったら食べてください。桐原珠美
「…そういう事か」
つまり、さっきは桜沢が…なんて言ってたけど、それは嘘だったということか。
あいつ、恥ずかしがり屋なんだな。
―俺のお嫁さんになるには、もっと料理の勉強が必要かな。
だから、毎日俺にお弁当作ってよ。
そうすれば、すぐに上達するだろ?珠美。
初綾芽。
勝手に、予習するからお昼いらない、設定にしちゃったけど
どんだけ優等生なんですかね。
綾芽くん、高校生のくせに大人っぽすぎます。
10.04.04