ガンダム00 | ナノ



2月。

2月は今私の隣に立っている金髪の軍人とあまり一緒にいたくないイベントがある。

それは、バレンタインデー。

格納庫にいるときはいいけど、廊下を歩くときなんかは他の女性からの視線が痛い。

それも、このモテモテ軍人のせい。

仕事で一緒にいるだけなのだから、羨ましがられたり、憎まれたりしても、私は困るだけ。



「女って、怖いねぇ」



まるで私が頭の中でつぶやいたことに答えるかのようにそう言い、
やれやれと首を振っているのはビリー・カタギリ技術顧問。

この人、超能力者か何かなのだろうか。



「なんだ、カタギリ」



今の今までフラッグしか見ていなかったグラハムの目がビリーをとらえる。



「いや、なんでも。そういえば、名前、もうすぐバレンタインだけど、君は誰かにあげるのかい?」



「ビリーさん、欲しいんですか?」



「うん、本命でいいよ」



「・・・」



そんなふざけたこと、サラッと言われても、返答に困るんですけど・・・。

しかも、毎年あげてるじゃない。

私が何も言わずにいると、ビリーはハハッと笑った。



「冗談だよ」



冗談に聞こえない。



「グラハムは毎年たくさんもらってるね。今年はどれくらいかな?」



「さあな。特に興味はない」



本当に、グラハムは毎年山のようにたくさんのチョコレートをもらっている。

軍の中では、それほど人気なのだ。



「好きな人からもらえないのなら、意味はないだろう」



どこか、遠くを見るような目で、グラハムが呟いたのを、私は聞き逃さなかった。

もちろん、ビリーも。



「カタギリ、名前、フラッグの整備、頼んだぞ」



グラハムはそう言って、格納庫を後にした。



「好きな人って・・・ガンダムかな?」



グラハムの後姿を見送りながら、ビリーがからかい口調で言う。



「フラッグじゃ、ないですか」



私は小さく、ポツリと。

―好きなもらえなければ、意味はない。

グラハムには好きな人がいるのだろう。

きっと、とてもきれいな人に違いない。

そう思うと、私はなんだか悲しくなった。








バレンタインデー前日、私はグラハム機の整備をすすめていた。

いつ敵が襲ってくるかわからないので、整備はやれるときにやってしまわないと。



「名前、ちょっといいかな」



ビリーがフラッグの下から私を呼んでいるのがわかったので、私は作業を中断して、急いでビリーの方へ向かった。



「なんでしょう」



「明日のことだけど」



「バレンタインですか?」



「うん」



「ビリーさんのは、ちゃんと作ってありますよ」



昨日の夜、ビリーや、お世話になっている人たちのチョコは作り、今は冷蔵庫の中だ。

今日仕事が終わったら、ラッピングをする予定。



「おや、ありがとう。それで、グラハムの分は作ったのかい?」



「え・・・」



グラハムは、どうせたくさん貰うのだからいいだろう、ということで、準備はしていない。

でもなぜこの人はそんなことを聞くのだろう。



「君がグラハムに想いを寄せていることくらい、知っているよ」



「・・・え、えぇー!?なんでっ!!」



「君はわかりやすいからね。それにここにいるみんなも知っているよ」



まわりを見ると、今まで作業をしていた技術者達は、いっせいに私を見、ニヤリと笑って、すぐまた作業に戻った。

私はたじろいだ。

だって、グラハムさんもそのことを・・・



「グラハムさんも、知っているんでしょうか・・・」



もし知っているなら、私の恋はどうなる。



「いや、知らないと思うよ。グラハムは意外と鈍感だからね」



ビリーはハハッと笑った。
私はそんなビリーの横で胸を撫で下ろした。



「だから今年は、グラハムにもあげたらどうかな」



ビリーは言った。

ここまま、パイロットと技術者という関係で終わってもいいのか、と。

そんなの、いいわけない。

でも、引っ込み思案な私から、わたせるのだろうか。



「ちょっと、考えてみます」



苦笑するビリーに背を向け、私はまた仕事に戻った。







13日、夜。

私はまだ悩んでいた。

―グラハムにチョコをわたすか、わたさないか。

物の準備は出来ている。

もうすでに、小さな箱はリボンでとめられ、わたされるのを待っている。

でもどうやってわたそうか。

面と向かってわたせば早いが、まず無理だろう。

いい案は浮かばない。



わたす方法を考えている間に、夜は更けていった。








14日、朝。
出勤して最初に、私はみんなにチョコを配った。
みんな、よろこんでくれて、私もつられて笑顔になった。


「名前、グラハムには・・・?」


ビリーが私も耳元で、こっそり尋ねてきた。


「今頃、気付いたころじゃないでしょうか」


気付いていてほしい。



フラッグのコックピットに置いてきた、小さな箱のことを。




そのころ、フラッグ・グラハム機。


「?これは・・・フッ、彼女らしいな。あとでお礼を言おう」

私の愛しい人、名前に―










グラハム全然出てませんね、これで夢小説といえるのでしょうか。
いえ、言います!
言わせてみせます! ←

私にしてはだいぶ長くなりました。
いつも超短い文onlyなので。


09.02.12




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