黒子のバスケ | ナノ

そうだ、スイパラに行こう

「…赤ちん、これ全部食べていいの?」
「あぁ、80分食べ放題だ」


今日は10月9日、紫原の誕生日である。
運良く学校と部活が休みだった帝光中バスケ部。
駅前のスイーツパラダイスに紫原の誕生日を祝うためにやって来ていた。

「…それにしても、なんだか注目されてますね」
「当たり前だろう、こんなカラフルな頭で大きい体をしているんだ。」
頭一つ分以上飛び抜けた身長に青黄緑紫赤の頭、彼らは店中の注目をケーキ以上に受けていた。

「えっと…五名様ですか?」
「六人です」
いつものように黒子が忘れられ、恐る恐る席へ案内する店員。
席へ着くやいなや紫原がガタンと立ち上がる。

「赤ちん、ケーキ!」
「待て敦、今から店の決まりを教えてもらうから」
「でもケーキ…なくなっちゃう…」
「大丈夫だ、無くならない。ほら一回座れ」
赤司に促され渋々座り直す紫原。
未だに若干びくついている店員から丁寧な説明を受け、いざケーキバイキングへ。

「黒子っち、ケーキ取りにいこ!」
「黄瀬、お前は席を立つな」
「え〜、なんでッスか緑間っち〜!」
「お前が向こうにいたら食べ物を取るどころではない。どうしても行きたいなら青峰を連れていけ」
そう言って黒子と共に食べ物を取りに向かう緑間。
残された黄瀬の隣には、非常に不機嫌そうな顔をした青峰が鎮座していた。

「青峰っちは行かないん…ッスか?」
「お前がここに1人残ったら、女共が集まって俺らが座れなくなんだよ」
眠そう、かつ不機嫌な声で答える青峰。
ぶーっと頬を膨らませる黄瀬を尻目に、何かを思い出したようにぽんっ、と手を叩いた青峰。

「俺、飯は全部テツに任せてっから向こう行かないぜ」
「……は?」
「向こうに行くときは俺を連れてくんだろ?俺こっから動かねえから」
「ちょ、青峰っち!?!?」





「ねー、おねーさん。このケーキ全部持って行っていい?」
紫原の指指す先には苺がたっぷり乗ったショートケーキ。
出されたばかりなのだろうかまだホール一つまるまる残っていた。

「…っえ、あの……はい、どうぞ…」
「ありがとー」
へらっと笑いケーキを持って行く紫原、そんな紫原を店員はただぽかーんと見つめていた。





「…すみません」
「どうしたテツヤ、トイレか」
「いえ…、ギブです」
食べ放題を始めて30分弱、パスタ一皿ケーキ一つを食べたところで黒子がギブ宣言。
そんな黒子の隣でケーキ(ホール)を食べている紫原。
口に運ぶ手を止め黒子を見る。

「黒ちんもう終わり…?」
「黒子っち、相変わらずッスね〜」
食べ放題なのにー、もったいないーと言いながら再びケーキを食べ始める紫原。
いつものことか、と他のメンバーも再び食べ始める。
しばらくすれば、紫原が持ってきたホールケーキサイズの皿が3枚…4枚…と重なっていく光景に正直他の面々は若干寒気を覚えていた。





「もう、ケーキはしばらくいらないッス…」
「生クリームが…たまる…のだよ…」
80分の制限時間を終え、店を出てきたメンバー。
食べ過ぎたのか苦しそうな顔をしている(紫原以外)。

「せ、背骨が痛てぇ…!」
「…今日のメニュー半分にします…」
「みんななんでそんなじーちゃんみたいになってんの?」
パスタやサラダには目もくれずケーキやアイスだけをひたすら食べ続けていた紫原が一番けろっとした顔をしている。
そんな紫原を見てさらに顔色が悪くなってしまうメンバー。

「紫原くん…よくあんなに食べて平気ですね…」
「別に全然平気だしー、もっと食えるけどー?」
「…紫原、もう黙るのだよ…」
頭を抱える緑間、その隣で紫原に話しかける、赤司。

「敦、楽しかったか?」
「うん、すげー美味かった。赤ちんありがとね」
ふわっと笑う紫原、それにつられて微かに笑う赤司。

「黄瀬ちんも峰ちんも、緑ちんも黒ちんも。みんなありがとー、楽しかった」
「そう言ってもらえて何よりです、紫原くん」

「紫原くん、誕生日おめでとうございます」
「紫原っち、誕生日おめでとッス!」
「誕生日おめでとうなのだよ」
「はぴばー」
「敦、おめでとう」

そういって手渡されるまいう棒100本パック。
今日のためにみんなでお金を出し合って買った紫原への誕生日プレゼントだ。

「みんな……ありがと」
そうお礼を言う紫原の頬はほんのり赤く染まっていた。

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