黒子のバスケ | ナノ

となりの安らぎが愛しくて

「どうしよう…傘なんて持ってないよ…」
急に降りだした雨、あいにく折りたたみ傘を家において来てしまった名前は途方に暮れていた。
昇降口で一人佇んでいると無機質な振動音が聞こえてくる、メールだ。

「ん…誰?……っ!」
差出人の名前は愛しい人、本文には彼らしい言葉でこう綴ってあった。


From:黄瀬涼太
本文:今日傘持ってなかったよね?学校で待ってて、迎えに行くから。




「…ごめんね、黄瀬くん」
「なんでッスか?全然平気」
相合傘をして道を歩く2人。
部活が休みだったので迎えに来たという黄瀬、しかし名前にはそれが嘘だと容易に見抜けた。

「黄瀬くん、今日部活あったんでしょ?」
「…まぁ…」
申し訳なさそうに苦笑いで返す黄瀬、そんな黄瀬を見て名前はさらに問いかける。

「なんで来たの?」
「なんでって……会いたかったからじゃダメ…ッスか?」
傘が無いなんて都合のいい言い訳ッス―――。
そう呟く黄瀬に不覚にもきゅんとした名前。

「もちろん名前っちが風邪引かないように…って言うのはあるッスけど…。俺、会いたかったんッス…名前っちに」
高校に上がると同時に学校が離れてしまった2人。
遠距離というほど遠いわけではないが黄瀬の部活や名前のバイトなどで時間が合わずにここ最近全く会えていなかった。
電話をしたのは1週間前、メールをしたのは昨日。
近いようで遠い距離。

「…ありがと、私だって会いたかった…けど…」
「…けど?」
どこか寂しそうな目で名前が言葉を紡ぐ。

「部活は…サボっちゃだめ…だよ。私はバスケしてる黄瀬くんが大好き…だから」
「名前っち…」
「普段の黄瀬くんも大好きだけど、バスケしてる黄瀬くんはどんな人よりかっこいいから。だからバスケ…して?」
ふわりと笑う名前、そんな名前を見て黄瀬は思い出したかのように話す。

「次の日曜日、練習試合あるんスよ。見に来ないッスか?」
「…行く!」
明るい声で名前がそう答えた時、名前の心とリンクするように、雨は上がっていた。

prev / next

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -