黒子のバスケ | ナノ

似合いの赤に沈め

「…っは、ここにもない…」

名前は雨が降る校庭であるものを探していた。
大切な恋人である赤司からもらったお揃いのストラップ。
いつも大事に携帯につけていたのだが、彼女のことをよく思わない女子達に
ストラップを引きちぎられ、雨が降っている校庭に投げ捨てられた。
この雨の中探すことは躊躇われたが、どうしても諦めることができず
傘もささずに茂みの中を探しているに至る。

「…ここじゃないの…かな、あっち…?」
「名前!!」
「…っつ、赤司くん…」

傘もささずにユニフォーム姿のまま走ってきた赤司は
名前を見つけるとすぐさま抱きしめた。

「…何をやっているんだ…、こんな雨の中」
「…だって…スト…ラップが…」
「…ストラップ?」

今にも泣き出しそうな名前の頭を撫でつつ問いかける赤司。
もちろんあげたストラップのことを忘れているわけではないが
なぜ今その話しなのか、という顔をしている。


「赤司くんが、くれた、ストラップ、…無くしちゃって」


しゃくりあげながらたどたどしく答える名前。
まさか女子達に捨てられたなどとは言えずに、自分のせいだと。

「…それならまた同じ物を買って…」
「同じのじゃダメなの!赤司くんが、一番最初にくれた…のに…」
「…分かった、でも今日はもうやめにしよう。風邪を引くよ」

動こうとしない名前をお姫様抱っこし体育館へ歩いて行く赤司。
赤司の首に手を回し声を殺して泣く名前。


「…っ、ごめんね、赤司くんっ…」
「謝らなくていいよ、悪いのは名前じゃないだろう」
「……っ。」


赤司は自転車置場の影から名前を見ていた例の女子達を見逃しはしなかった。
その視線に気づいたのか、女子達は顔をひきつらせて逃げ去っていった。







「…だから言っただろう、風邪を引くと」
『ごめんなさい、赤司く…げほっ」
「無理して喋らなくていい、放課後見舞いに行くから、じゃ」

翌日、案の定風邪を引いた名前は部屋で一人寝込んでいた。
以前も体調を崩した時、赤司に連絡をしなかったお仕置きとして
死ぬほどのキスを要求されたことがあるので今回はそのようなことがないように
しっかりと連絡を入れた、とりあえず寝れるところまで寝ようとしたその時。
不意に名前の携帯がなった。


From:葉山先輩
本文:赤司がね、なんか今日の朝女子達からストラップ取り返したー
   って言ってたよ、マジで!
   よくわかんないけど一応言っとくからなー!


「…う、そ…」

投げ捨てられたと思っていたストラップは実は投げられておらず
ずっと女子達が隠し持っていた、という事だったらしい。
昨日の事実が理解できたところで名前は赤司にメールを打つ。


To:赤司くん
本文:ストラップありがとう


ただ一言だけの簡潔なメール、だがその中には
赤司への感謝の気持ちがたくさん詰まっていた。



余談ではあるがストラップを奪った女子達が赤司に
こてんぱんに責められたことは言うまでもないだろう。




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