息が苦しい。
バスケやって疲れたわけでもねぇ、犬にびびったわけでもねぇ。
なのにこんなに苦しいのは…。
『火神くんっ』
「ん、どした名前」
苗字名前、俺の可愛くて大事な彼女。
黒子にはよく「名前さんと一緒にいる火神くんは目つきが良くなる」って言われる。誉められてんだかわかりゃしねぇ。
『今から部活?』
「あぁ、お前は?」
『私はね、休み。顧問の先生出張なんだって』
名前はダンス同好会に入っていて、毎年文化祭ですげーダンスをする。
俺は笑顔いっぱいに全力で踊るこいつに……一目惚れした。
「じゃあうちの部活来いよ、1人で待ってるの暇だろ」
『火神くんを待つなら、私いくらでも待てるよ?』
こういう不意打ちが多すぎる。
いきなりすげぇこと言い出したりするから俺は終始ドキドキしっぱなし…。
「……じゃあ俺がいてほしいって言ったら?」
『…大好きな彼氏様の頼みは断れないね』
……きっと今の俺は顔が真っ赤だ。
いきなり大好きとか、俺が男だって自覚あんのか…?
ほら、また心臓がうるさい。
「…っは…、はぁ…」
「火神くん、いつもよりペース早いですけど大丈夫ですか?」
「こら火神!いくら彼女が見てるからって無理に飛ばさない!」
名前がいると、何でだか知んねーけどダンクがめちゃくちゃ決まる、シュートが入る、高く跳べる。
その分体のガタは早く来てミニゲームの半分でガス欠。
「おい火神、お前飛ばしすぎだっつんだよ」
「…っは…、すんません…」
「いいわ、5分休憩!」
かっこいいとこ見せねーと、って思うからいつも飛ばしすぎてガス欠なって…。
ほんとカッコわりぃ。
『今、カッコ悪いって思ってるでしょ』
「っ…」
『いつもよりペース早すぎ、そんなんじゃこれから持たないでしょ?』
「それは…」
なんでもお見通し…ってわけか。
ほんとに名前にはなんでもバレてる…っつかな。
『…カッコ悪くなんかないよ。だって火神くんは…』
そう言った名前は俺の耳元でこう囁いた。
だっていつもカッコイイでしょ。
『何してたって火神くんはカッコイイんだよ』
だからそんなこと気にしないで練習しろ、
そんな事を言わんばかりに見つめてくる名前。
「ほんと…敵わねぇな」
俺は他のみんなに見えないようにそっと
名前の額にキスをした。
ほら、まただ。
過呼吸が止まらない。
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