にゃあ、という鳴き声ひとつ。
家に帰る途中、ふと耳にした猫の声。
「ねぇ、今聞こえた?」
「なにがー?」
「猫の声…」
「猫…?あ、あれじゃない?」
小金井が指差した先にはダンボール箱が一つ。
茶色っぽい耳が少しだけ見え隠れしていた。
「捨て猫…かな」
「たぶんね……可愛いー!」
そう言いながら猫を抱き上げる小金井。
猫と戯れる小金井を見て、ふっ、と笑い出す名前。
「ん、なんだよー」
「いや、小金井くんと、猫、すっごい似てる…っ」
本格的に笑い出す名前を困り顔で見る小金井。
「そんなに似てる?」
「うん、すっごく。可愛い」
「…どっちが?」
「…どっちも…っ」
そういうと猫を抱えたまま名前に近づく。
名前と小金井の間で、にゃあと猫が泣いた刹那。
「……っふ…」
「っ……これでも、可愛いって言う?」
キスを落とし、いたずらに笑う小金井を見て頬を染める名前。
小さな声で、小金井の耳元でつぶやく。
「…ん、かっこいい、小金井くん」
その言葉にかかるように、猫がまた、鳴いた。
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