「なー、青峰」
「なんすか今吉さん」
「名前のことどう思っとるん?」
「どうって言われても…」
同じ体育館で、マネージャーの仕事をしている名前をちらりと見やる。
「好きなんか、そうやないんか。どっちや」
「…知らねっす」
ふいっと目線を逸らし手元のバスケットボールを弄りだす。
「…オレが人を好きになんて、ならねーよ」
――――――――――――――
名前が告白してきたのは2ヶ月前、どうせ暇だから遊びのつもりで付き合い始めた。
はずだった。
変な所で頑固で、ヤッてる時は恥ずかしがり屋で、怒ると超怖ぇ。
好きでもねぇ女といて、こんなに楽しいなんて感じたこと、
今までなかった。
――――――――――――――
「青峰、あの子ワシがもろてもええか?」
「…は?」
「好きやないんなら、ワシがもろてもええやろ」
何一つ変わらない表情で話す今吉を軽く睨みつける青峰。
二人のところに連絡を伝えに来た名前は何も知らずに話しかける。
「キャプテン、明日の練習なんですけど……っ!?」
「コイツは俺のなんで、あんたになんかやらねーよ」
後ろからぎゅっと名前を抱きしめ今吉に言い放つ青峰。
腕の中の名前はわけが分からずに真っ赤な顔で慌てふためいている。
そのまま手を引いて体育館を出ていく青峰、そんな青峰を見て今吉は呟く。
「なんや、もう十分好きになっとるやん」
「…ちょっ、青峰くんっ…」
「んだよ」
「あの、さっきの……嬉しかった」
頬を赤く染めたままふわりと笑う名前。
「あぁ…まぁ間違ってねぇし」
そう言った青峰はそのまま名前の首筋に紅い華を咲かせた。
わざと、制服で隠れないところに。
「恥ずかしいならバンソーコーでも貼っとけ」
そのまま部室へ戻っていく青峰の耳はほんのりと、赤く染まっていた。
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