「お、起きたか?」
優しそうに微笑む福井を、怯えたような目で見つめる名前。
所々破けたままのTシャツ一枚に、ぐちゃぐちゃなままの髪の毛。
そして、足に繋がれた鎖。
「どーした?腹減ったか?」
「…い、いらな……っっ」
頬に触れた手にぴくりと反応する名前、その一瞬を福井は見逃さなかった。
ボロボロになっていた服を脱がせ、一糸纏わぬ姿になった名前の体には、
無数の紅い華が咲いていた。
「何?今、感じた?」
「ち、ちがっ…っぅあ!」
名前の中に滑り込んだ指が音を立てる。
目に涙を浮かべながら、ひたすら声を押し殺す名前。
「声我慢すんなって、もっと聞かせろ」
「…っや、はな、してっ…」
「だーめ、お前は俺のもんだって…まだわかんねぇの?」
ぐちゅりと音を立てて抜き取られた指は、微かに赤く染まっていた。
「この部屋から出たら…、お前は俺のもんじゃなくなっちまう…。んなの…耐えらんねぇよ…」
そう言うと、再び増え始める紅い華。
首筋、胸、腰、手首。消えなかった華が青い痣となって残っている。
「首筋は執着、胸元は所有、手首は欲望、腰は…束縛。お前はこっから出られねぇ、出さねぇよ。お前のことは、俺が、一生護るから…」
―――ここに居れば安全だ。
抗うことなどできずに、ただ肩を震わせ涙を流す名前。
足の鎖が、名前の自由を奪っているようにまた。
福井健介という存在が、名前の心を奪っていた。
怖い、けど好きだから。
あなたのそばから離れられないの。
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