「私は好きだよ?降旗くんのこと」
学校の帰り道、ぽつりと名前が呟いた。
「…何言って…」
「好きだって言ってんの、わかんないかなー」
腕をぐーっと伸ばしながら余裕そうに答える名前。
多いとはいえない街灯に照らされたその顔は、余裕がありそうな顔。
ではなかった。
「本気で言ってる?」
「本気、超本気。私冗談でこんな事言わないから」
余裕のない顔で余裕そうなことを口走る名前。
気づけば伸ばしていた腕は下に降り、降りたその手を降旗が握っていた。
「最初はね、火神くんだったの。大きくてかっこいいじゃん?」
「…まぁ…、そうだけど」
「でも、いつの間にか降旗くんのこと好きになってた」
ぎゅっと、手を握り返す。
共有する、手のぬくもり。
「最初は頼りないーとか思ってたけどさ。
仕事いっぱい手伝ってくれて、結構優しくて。
マンガみたいな理由だけどさ、好きになっちゃったもんは
仕方ないじゃん?」
あはっ、と微かに笑う名前。
――降旗くんに好きな人がいるのは知ってるから。
そう言って繋いだ手を解こうとした時。
「…お前、覚えてないの?」
「…なにが?」
「俺が好きなの、お前なんだけど」
ぴたりと立ち止まる。
繋がれた手はそのまま、震える名前の肩を抱きしめる降旗。
「何かで1番になったら、って言ったのお前なんだけど。」
「…覚えてない」
「そりゃ、お前モテるから。あんだけ毎月告白されたら忘れるよ、返事の1つ2つ」
さっきより強く、繋がれる手。
ぎゅっと右腕で、名前を抱きしめる降旗。
「…ごめん、降旗くん…」
「別に、気にしてない。名前が好きって言ってくれるなら、それで十分だから」
「……っ好き、好きだよ、降旗くん。」
うっすらと涙を浮かべながら応える名前の表情は、余裕のない、幸せそうな表情へと変わっていた。
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