皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 山崎ダビデ(1/2)

「随分と楽しそうなことをしているね」

唐突に現れた気配と声に、俺は顔をしかめざるを得なかった。背後にいる氷竜キリの同級生三人が息を呑む。
先ほどまでこの屋上には自分を含めて四人しか居なかったはずだが、いつの間にか気配が一つ増えている。
視線を斜め上に向けると、そこには制服姿の女子生徒が居た。数センチしかないフェンスの上部に器用に座っている。
金色の髪と緑色の瞳。人当たりの良さそうな笑みを浮かべているが、そこにはどこか得体の知れない不気味さがある。

「初めまして、山崎ダビデくん。私は皆の先輩こと黒岳カガリだ。以後お見知りおきを」

初めて見る女子生徒に名前を呼ばれたどころかにこやかに挨拶をされた。
少なくとも面と向かって会ったことはない。
だが、その名前には聞き覚えがあった。

「……なるほど、アンタがキョウヤくんが言ってた黒岳カガリっていう先輩ちゃんか」

――君たちの周辺に黒岳カガリと名乗る女の子が現れるかもしれないけど、彼女は僕の知り合いだ。くれぐれも、手は出さないようにね。
そう警告した時の臥炎キョウヤは威圧を含めた笑みを浮かべ、その一方で後ろに控えていたソフィア・サハロフは眉間に皺を寄せていた。
こうして実際目の当たりにしてみると、なるほど。厄介そうな相手だ。

「相変わらずおしゃべりだなあ、臥炎は。まあ、余計なことをしゃべったわけではないから別にいいのだけれど」

黒岳カガリは俺から視線を外し、眼下で繰り広げられているファイトを見やる。
最初に言っていた『楽しそうなこと』とは未門牙王と氷竜キリのファイトを仕向けたことを指しているのだろう。
しかし、解せない。何故このタイミングでこいつが現れたのか。
ちらり、と黒岳カガリの表情をうかがう。
俺の視線に気付いていないのか、はたまた敢えて無視しているのか。やつは校庭を見据えたままだった。

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