皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 未門陽太A(1/4)

春の柔らかい陽射しが窓から病室へ差し込んでいる。天気予報によると今日は一日中快晴らしく、過ごしやすい日になりそうだと言っていた。

「陽太は、轟鬼ゲンマという少年を知っているかい?」

そんな日の昼下がり。アスタロトと共に俺の病室を訪れたカガリは挨拶もそこそこにベッドの横にある椅子に座り、突然質問を投げかけた。
それに対し、俺は首をかしげざるを得なかった。
カガリの言う轟鬼ゲンマと、俺が思い浮かべている轟鬼ゲンマは、恐らく同一人物だ。
しかし、なぜカガリがゲンマのことを知っているのだろう。

「ああ、ゲンマならたまに俺の病室に来るやつだけど、どうかしたのか?」
「いや、なに、アスタロトが轟鬼少年に喧嘩を吹っかけたらしくてね」
「え」
「いや、私は悪くないぞ、カガリ。そもそもやつがマジックワールドのモンスターは軟弱だと言ったのが」
「その流れで私を巻き込んでバディファイトをしたのだけれど」

弁解しようとしたアスタロトの言葉に、カガリの言葉が容赦なく被せられた。
瞬間、アスタロトがびしりと固まり、その場でうなだれるが、カガリは構わず話を続けた。

「ファイトのあとに『俺は『太陽番長』になる男だから泣かねえ!』と謎の言い訳のあとに逃げてしまってね。陽太に訊けば『太陽番長』という言葉の意味が分かるのではないか、と思った次第だ」

数分前にゲンマが涙目で病室を訪れ、その後すぐに出ていったのはそういうわけか。会話の内容を聞く限り、恐らくカガリが勝ったのだろう。
しかし、年下相手に本気を出すとは。カガリもなかなかに大人げない。

「……私は全力を出さないと失礼だと思っただけだよ」

どうやら無意識のうちに考えが顔に出てしまったらしく、カガリはむっとした表情になる。
思わず肩が反応し、俺は少し視線を逸らした。

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