皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 絢爛朱雀A(1/4)

ほのかに暗く、切れかけの蛍光灯が休憩所を照らしている。施設内に三人以外のひと気はない。次のバディファイトクラブの開催時期はまだ先だが、スケジュールの調整は必要だったため、その打ち合わせをようやく終えたところだった。

「そういえば、最近悪魔達の間でトレンドの『悪魔のような女の子』に会ったんスよ」
「……『悪魔のような女の子』?」

その会話は、煙草をふかしている戦士ハルファスの比喩的な表現から始まった。しかし、これはどういった意味で捉えるべきなのだろうか。
発言者であるハルファスは、悪魔だ。悪魔の言う『悪魔のような女の子』とは一体、と首を傾げていると、隣にいた紳士マルファスがすかさず補足の説明を始めた。

「ワタクシが聞いた噂では魔王アスモダイが『壊滅的に性格が悪い』と言っていたようで、だから『悪魔のような女の子』と言われているとか。……まあ、ワタクシは『悪魔のような女の子』というより『聡慧(そうけい)な少女』だと思いますがね」

聡慧とは才知に優れること。そして才知とは才能と知恵のことを指す。
つまりマルファスはその子どものことを天才と言いたいのだろうか。
しかし、たかが人間の、それも子どもに対して聡慧とは随分と大げさな表現だ。
どうやらそう思ったのは僕だけではなかったらしく、ハルファスがすかさず言葉を返した。

「えー! でもカガリちゃんものすごく性格悪いじゃん! 普通の人間だったらためらうレベルの嫌がらせ的な戦法を真っ先に選びやがるし! 絶対に悪魔だろ、悪魔!」
「ワタクシもそのことについては否定はしませんが、そういうところも含めて聡慧と評しますね。ハルファスはもう少し頭を使って表現すべきです」
「うっせえ、カラス!」
「黙りなさい、ハトめ」

ハルファスとマルファスの間に不穏な雰囲気が漂う。今にも殴り合いを始めそうだ。流石にここでそれは頂けない。
控えめに咳払いをすると真っ先に暴言を吐いたハルファスがさっと視線を逸らし、マルファスは肩を竦めた。
やれやれ、と溜め息を吐き、僕はマルファスと向き合い直した。

「マルファスはなぜその子を聡慧だと?」
「まあ、あのアスタロトをしつけ……ごほんっ、バディにしているということもありますが」

アスタロトと言うと、マジックワールドの大公爵アスタロトのことだろうか。それより途中なにか変な言葉が聞こえたような気がする。
しかし、マルファスはなにごともなかったように言葉を続けた。

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