皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 黒岳テツヤ@(1/2)

カガリ姉ちゃんは俺より年が五つ上で、今でこそ離れて暮らしているが、それは姉弟(きょうだい)の仲が悪いからというわけではない。
あれは俺が小学四年生で、カガリ姉ちゃんが中学三年生だった時のことだ。

「私、高校に上がったら家出るからね」

学校説明会から単身帰宅したカガリ姉ちゃんの言葉に、黒岳家のリビングは無論騒然……というか、近所迷惑を省みず、俺と妹は大号泣してしまった。
てっきり姉ちゃんが家族を嫌いになったから出て行くのだと。
そんな、有り得ない勘違いをした。
つまり、原因はいつも通り姉ちゃんの言葉足らずにあった。

「まったく、カガリったら……二人とも泣いちゃったじゃない」
「あ、ごめんね、母さん。よーしよし、我が愛しの弟と妹よ。姉の言葉足らずだったよ。ごめんね」

母ちゃんに軽い叱責をされた姉ちゃんは俺と妹の頭をひとしきり撫でたあと、補足説明を始めた。
姉ちゃん曰く、行きたい学校が自宅から少しばかり遠く、通学時間が長いのは好きでない。だから友人の一家が使っていない部屋を貸してくれる話になった、ということらしい。

「まあ、部屋というか家らしいんだけどね。めだかさん、知り合いのパパさんが庶民の生活を体験するために用意してそのまま放置していた家を使わないかって言われてね。お言葉に甘えようと思ったわけ」
「カガリの友達は不思議な人達ばかりだなあ」
「あれは不思議というか価値観ぶっ飛んでるんだと思うよ、父さん」

のんびりとした父ちゃんの意見に、姉ちゃんは肩を竦めた。
姉ちゃんが嫌いになったわけではないと聞いて安心したのか、涙を引っ込めた妹はうとうととしていた。
それに気付いた姉ちゃんは妹を抱き上げ、あやすように背中を撫で始めた。
そんな様子の二人をしばらく見つめていると、姉ちゃんは俺と目線を合わせるように腰を落とした。

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