皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 絢爛朱雀@(1/4)

エージェントに扮した絢爛朱雀は見込みがあるバディファイターに招待状を渡したあと、軽い足取りで路地裏から表通りへと出た。
休日ということもあり、街の人通りが激しい。空から降り注ぐ日差しは厳しく、湿気を含んだ熱気が頬を撫ぜた。
キャップを被り直し、人の波をすり抜けるようにして歩いている途中、超名古屋駅前に立っている奇妙な二人が目にとまった。
制服姿の少女とスーツを着た男。いつもなら流し見る程度で済ませるはずなのだが、どこか違和感がある。
僅かに目を細めて注視すると、男から人間のものとは違う気配を感じた。どうやらあれも自分と同じく人間の振りをしているバディモンスターらしい。容姿の名残から考えると……恐らく、マジックワールドの大公爵アスタロトだ。
確かわざわざSD化をせず、人に化けているアスタロトの話は以前聞いたことがある。
バディである少女の話も、また然り。

「本当に大丈夫なのかい?」
「……少し、酔っただけだ」
「新幹線で酔う派だったなんて先に言ってくれればいいのに。顔真っ青だし」
「これは元々だ……」
「はいはい、そうだったね。とりあえず水買ってくるけど少しの間、我慢出来る?」
「問題ない……おえっ」
「……そこで吐かないでね。吐くなら駅のトイレで吐きなさい」

呆れ顔の少女は踵を返し、超名古屋駅構内へと向かう。その背をしばらく見つめたあと、朱雀は動いた。
無論、しゃがみ込んでいる男と接触をはかるために。

「そこの兄ちゃん。少しええがね?」
「……とてもじゃないが無理だ」

どうやら顔も上げられないほど気分が優れないらしい。
が、そのまま話を続けることにした。

「さっきの連れの女の子、バディファイターじゃにゃあかあ?」

朱雀の指摘に対し、男の肩が僅かに反応する。男はゆるゆると青白い顔を上げ、朱雀を睨み上げた。

「貴様、何者だ」

男のその言葉は少女がバディファイターであることを、そして自分がバディモンスターであることを肯定したようなものだった。
恐らく体調が優れないことにより、判断力も鈍っているのだろう。
そんなことすら気付けずに警戒心を露にする男に、朱雀は余裕を持って笑ってみせた。

「貴方達の噂はマルファスとハルファスから聞いていますよ、大公爵アスタロト。少しお時間を頂いても? 僕としてはお嬢さんが来てからでも構いませんが……大切なバディ、厄介ごとに巻き込みたくはないでしょう?」


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