皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 黒岳テツヤA(1/2)

「テツヤ、大丈夫?」

僅かに歪んだ視界に、テツヤはこちらを覗き込む姉の姿を捉えた。どうにも決まりが悪く、とっさに顔を逸らすが、ぼろぼろと溢れ出る涙が止まる気配はない。
その上、傷口に砂が入った感触で膝の痛みがひどい。
俯き、しばらく地面を見つめていると姉がそっと頭を撫でた。

「歩ける? それともおんぶする?」
「……おんぶ」
「分かった。ほら、乗って」

慣れた様子でしゃがみこんだ姉の背中に飛びつくようにおぶさると、両方の膝裏に手が回った。よいしょ、という姉の掛け声と共に一気に視界が高くなる。
姉は自分をおぶったままゆっくりと歩き出し、公園を出た。

「テツヤはホント重くなったね。お姉ちゃん、おんぶ出来るか微妙になってきた気がする」
「えっ……や、やだ! やせる! まだおぶってもらう!」
「いや、太ったっていう意味じゃなくて、テツヤが成長したって意味。身長も伸びてきたでしょ?」
「……姉ちゃんでかいからおれの身長のびたか、なんてわかんない」
「その発言は少し傷付くのだけれど……まあ、いいか」

そう言って姉は僅かに肩を落とした。
どうやら身長の話はまずかったらしい。自分としてはむしろ身長がある姉が羨ましいのだが、ここは謝るべきだろうか。悩んでいるうち、姉は唐突に話題を変えてきた。

「ところでテツヤ。この前の短冊にどんな願い事書いた?」
「……願い事?」
「うん、すごく熱心に書いてたでしょ」

熱心に、という言葉を聞いたところで先日、家族とデパートに行ったことを思い出した。
確かにその際、七夕飾りのコーナーに立ち寄って短冊に願いを書いた。姉は「私は叶わない願い事しかないからなあ」と言って書かなかったが、他の人が吊るした短冊を眺めていた覚えがある。

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