皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ デスルーラーガロウズ(1/2)

「……ここは何処だゲ」

ぽつりと呟いた言葉は自分の身体がギリギリ収まる程度の広さしかない廊下に虚しく霧散した。
確か、オレは何処からともなく漂ってきた美味しそうな匂いを頼りにダークネスドラゴンワールドをさまよっていたはずだ。殆ど何の変化もない世界に初めて訪れた特異点に導かれるように進むと、辿りついた先は空間に僅かな歪みのある場所だった。そこから流れてきた香ばしい匂いに興味と食欲が湧き、飛び込んでしまった結果、今に至る。
廊下の狭さを考えてひとまずは小さくなった方が良いだろうと判断し、SD化した。
匂いの発生源はどこかの部屋に繋がっている扉の先からだったが、何かオレとは違う生き物の気配もする。
恐る恐るドアノブを回し、部屋の中を覗き込むと、そこには中が見えるようになっている箱を覗き込んでいる人間(多分メス)と人間に化けている悪魔(多分オス)の姿があった。

「カガリ、あとどのくらい掛かりそうだ?」
「んー、あと五分くらいかな。先に紅茶淹れてるね」
「ならば私はクッキーを見ていよう。決してつまみ食いはしようという気持ちは一切ない。断じてない」
「そっかー。じゃあ、つまみ食いしたら外に叩き出すから覚悟してね」
「……」

人間も悪魔も噂程度にしか聞いたことがなかったオレは二つが確かに存在していたことに目を見張らざるを得なかった。
自身とはまるで違う姿や形。
呆然とその場にとどまっていると、テーブルに何かを準備しようとしていた人間と目が合った。
しまったと思い、慌てて隠れようと試みるが、振り返った廊下には隠れられるような場所がない。
気まずげに再び扉から顔を覗かせると、人間は自分と視線を合わせるように扉の前で少しかがみ、微笑んでいた。

「こんにちは、可愛いお客さん」
「こっ……こんにちはだゲ」

本来の姿だったら鋭い爪で傷付けていたかもしれないが、SD化して文字通り丸くなっていたことが幸いした。差し出された手が握手を求めていることに気付き、人間の手を握り返す。

「見たことがないバディモンスターだな。カガリ、つまみ出そう」

悪魔のいる方向からとんでもない言葉が投げ掛けられ、ぎょっとして廊下に戻ろうとする。だが、その前に両脇を抱えられ、姿勢を正した人間の頭の上に乗せられてしまった。

prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -