皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 臥炎キョウヤA(1/4)

その年の臥炎財閥主催のパーティーは整備が間に合わなかったとのことで船上ではなく、某高級ホテルでの開催となっていた。
会場には各界の著名人や芸能人、そしてバディファイトで実力があるとされる子どもが集まっている。客人達への挨拶を済ませ、今まさに繰り広げられているファイトの様子を眺めるが、どれも普通で、ディザスターフォースに相応しいファイターは居なかった。
今回はハズレか、と嘆息を吐いた折、ふと会場の隅の方で制服を着た女子が居た。その隣には大公爵アスタロトの姿もある。
――バディがいるファイターなのに究極レアが賞品のファイトに参加していない?
思わず首を傾げていると、僕と同じように彼女を遠巻きに見ていた客人達の会話が耳に届いた。

「大公爵アスタロトをバディにしてるあの子、もしかしてあの相棒学園中等部の生徒会長じゃないか?」
「あー……例の学年ランキングに参加してない上にファイトの公式記録は一切ないっていう子ですね」
「何でまたこのパーティーに?」
「彼女、パーティーにはファイターとしてではなく、付き人として来たらしいですよ。さっき小耳に挟みました」
「ああ、だからファイトに参加してないのか。えーと、確かあの子が付き人をしている人ってあの……」

そこまで話を聞いたあと、僕は改めて彼女を見た。
大公爵アスタロトをバディにしているということは、彼に相応しいと判断され、実力を認められたのだろう。その証拠に彼女に向けているアスタロトの笑みはどこか穏やかだ。
だが、バディ持ちのファイターとは言え、実力は実際目の当たりにしてみないと分からない。現にバディを持っていながら弱いファイターはごまんと居る。
どうせ今回参加しているファイターの中にディザスターフォースに相応しい者は居なかった。
彼女の実力を見てみるのも悪くはないが、もし仮に実力があると分かった場合、どうしても人目が邪魔になる。
ならばと思い、視線の先へと歩き出すと、彼女は自分の方へ歩み寄ってきたこちらを見て目を丸くした。僕は彼女の前で立ち止まり、なるべく人の良さそうに見える笑いを浮かべる。

「君が相棒学園の生徒会長かい?」

唐突に話し掛けられた彼女は少しの間目を瞬かせる。そして隣にいたアスタロトと顔を見合わせて肩を竦めたあと、改めて僕と向き合い直した。

「よく言われるけど『元』生徒会長だよ。今はとある高校に通うただの一般生徒だ」
「……なるほど。道理で制服を着ているわけだ」

確かに、相棒学園の中等部は制服の指定がなかった。今彼女が着ている制服を何処かで見たような気がしたが、学校名は何だっただろうか。
まあ、今はそんなことはどうでも良い。

「君の名前を訊いても構わないかな?」
「黒岳カガリだけど……私に何か用かな、臥炎キョウヤくん」
「じゃあ、カガリ先輩。お願いがあるんだけど、控え室に来てくれないかな?」
「……控え室?」
「僕とバディファイトをしてほしいんだ」

そして君がディザスターフォースに相応しいかどうか、確かめさせてほしい。
心の中でそう呟いた時、何故か彼女は一瞬眉をひそめたが、すぐさま取り繕ったような笑みを浮かべて快諾したのだった。


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