皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 禍津ジン、真間雁メグミ(1/4)

「初めまして、こんにちは。禍津くん。真間雁ちゃん」

夕暮れに近付く街の一角にあるカフェ。大変見つけにくいという話を聞いていた人物はテラス席に座りながら、もっともらしい挨拶をした。
彼女の隣、奥の方の席には大公爵アスタロトが目を閉じたまま鎮座していた。SD化ではなく成人男性ほどの体躯、そして何故かスーツ姿だった。
俺とメグミは呆然と立ち尽くし、一度顔を見合わせる。
ーーあの人を見つけるのは、相当な苦労を要するだろう。
依頼主から二、三度繰り返し言われていた内容とはあまりにかけ離れていた。
これはどういうことなの、とメグミが前髪の奥に隠れている目で訴える。
生憎、それは俺も訊きたいくらいだった。

「二人とも、口が開いているよ。立ち話もなんだし、座ったら?」

結論を出すよりも先に探し人に促され、俺とメグミは素直に向かい側の席につくしかなかった。
放課後という時間帯だが、周りには学生服姿の客よりも大学生風の客の方が多い。
必然、私服を着ている俺たちよりも制服を着ている探し人の方が目立っていた。それも、ここから少し遠い場所にある有名高校の制服だ。
目立たないわけがない。
しかし目の前にいる探し人は気にする様子もなく、話を続けた。

「それで、禍津くんと真間雁ちゃんは私に何の用かな? 年齢的に私は君達と直接関わっていないと思うのだけれど」

指摘の通り、彼女は高校二年生で、俺とメグミは中学一年生だ。
初等部で同じ学び舎に居た頃はすれ違う機会くらいあっただろうが、それでも上級生の顔など殆ど覚えているはずがない。まして彼女が中等部に在籍していた時、俺たちは初等部だ。
つまり、依頼主から話を聞くまで俺たちは彼女のことを一切知らなかったのである。

「いや、俺たちは頼まれたことがあって来ただけです」
「頼まれたこと?」
「轟鬼ゲンマ……先輩を知ってますか?」

依頼主、もとい轟鬼ゲンマいわく名前を出せば分かってもらえるらしい。が、人違いということも有り得る。
本題を切り出す前に確認の言葉を述べると、探し人は僅かに眉を潜め、首を傾げた。

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