皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 死ヶ峰骸(1/3)

「ごめんなすって」

そんな挨拶と共にカガリと私の前に現れたのは、やけに目立つ黄色い学ランに、濃い灰色のマントを羽織っている少年だった。挨拶と良い、目深に被った三度笠と良い、随分と時代錯誤的だ。
そんな時代錯誤少年(仮)の傍らにはソフト帽を被り、スーツのような格好をした大柄なバディモンスターが控えている。少年のマントはこのバディモンスターを意識したのか、全体的に同じような色合いをしていた。
少年のあとに続き「Guten Morgen.」とドイツ語で挨拶をする。
時刻は午前8時。朝の挨拶としては大変正しいが、登校途中の学生とそのバディの前に立ちはだかるとはどういった了見なのだろう。

「……私達に何の用だ?」
「いえ、アスタロトのお兄いさんに用はございやせん。用があるのはそちらにおわすカガリの姐さんにござんす」
「……」

横目で隣にいるカガリを見るが、相も変わらず相変わらずといった様子だった。何故か私達の名前を知っている怪しい二人組に興味を示すどころか、いつものようにスマートフォンで今朝のニュースをチェックしている。
基本的にどうでも良い人間に対する態度は『こう』なのだが……いや、よく見るとカガリはニュースなどチェックしていない。画面に映っていたのはメモ帳の機能だ。
『今すぐ私を抱えて全力で跳べ』と。
こういった具合の文面である。
そして私の頭が言葉の意味を正常に理解するのと視界の端で少年が動いたのはほぼ同時だった。

「っ……!」

間一髪というところでカガリを引き寄せ、跳躍する。
人間に化けて力を抑えていても、バディモンスターの端くれだ。カガリを抱えながら屋根の上に着地することぐらい、造作もなかった。

「流石アスタロト。よく気付いたね」
「一瞬でも私の反応が遅れていたら斬られていたんだが……いや、きみは私が間に合うことくらい、分かっていたのか?」
「私はただ私のバディが間に合うと信じていただけだよ」
「……相変わらず、きみは私を乗せるのが上手いな」

私の腕の中にいるカガリに釣られて緩みそうになった頬を引き締めつつ、眼下の様子を伺う。
少年の方は道路に突き刺さることになった剣を抜きつつ、こちらを見上げている。少年の傍らに居たバディモンスターは棒立ちのままだ。

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