皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 如月斬夜(1/2)

「いやあ、まさかここで如月くんと出会えるとは思ってなくてね。いきなりファイトを申し込んだりして悪かったよ。はい、これお礼のジュース」

ぼくに挑み、そして負けた男子高校生はそう言って愉快そうに口の端をつり上げながら缶ジュースを差し出した。
突然目の前に現れた缶ジュースを見つめ、しばらく迷ったが無下には出来ないだろう。仕方なく「はあ、ありがとうございます」という言葉と共に受け取ると、男子高校生は目深に被った帽子を直しながら満足げに頷いた。

「いやあ、僕もまだまだね。最後は見事に絶命陣を決められてしまった」
「流石、相棒学園初等部学年ランキング一位の如月斬夜だな。私のバディが負けるのも無理はない」
「むっ、ちょっと、アスタロト。僕が負けたのにその言い方はないんじゃない?」
「ああ、それはすまなかった」

傍らに立っていた大公爵アスタロトが薄く微笑むと、男子高校生が不満げな表情を露わにする。しかし、すぐさま「でも次は勝つ」と言い、にい、と笑った。
ファイターがファイターなら、バディモンスターもバディモンスターということなのだろう。
かなり似た者同士だ。

「……負けたのに、嬉しそうですね」
「ん? そう見えるかい?」
「年下に負けて悔しいとは思わないんですか」
「おっと、手厳しいね。そりゃあ、負けて悔しいけど、僕より強い子を見られることはむしろ嬉しいことだよ」

男子高校生に笑顔を向けられ、閉口せざるを得ない。
先日、清風会にあらぬ疑いを掛けられた出来事を思い出し、思わず顔をしかめる。すると、隣に居る男子高校生が目を瞬かせる気配がした。

「えーと……その様子だと年上から何か嫌なことでもされた?」
「……それは」
「あ、見ず知らずの僕が言っても余計なお世話か。ごめん、今の言葉は忘れてくれ」

ぼくが言うよりも先に言葉を被せ、慌てた様子で両手を振った。そして僅かにぼくから顔を背けたあと、手に持っていた缶コーヒーを開け、口をつける。
そのやり取りを見ていたアスタロトが意味深長な苦笑いを浮かべ、肩を竦めた。
何となく気まずい空気が流れ、ぼくは堪らず口を開いた。

prev / next

[ back to top ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -