▼ 龍炎寺タスクBその1(1/3)
バディファイトクラブ関連で通報があり、向かった場所は超東驚の隣にある県だった。普通ならその県にある支部が担当するのだが、その支部の人とコマンダーIが相談した結果、バディファイトクラブを目の当たりにした僕が適任だと判断されたらしい。
そういうわけで、僕は閑静な住宅地に居た。通報のあった家は少し真新しく、周りよりも少しばかり大きい。
事前に受けた報告では家主が知人に貸し、今はシェアハウスのような状態になっているらしい。現に表札がなかった。
久し振りの任務に、つい肩に力が入る。緊張をほぐそうと深呼吸すると、傍らにいるSD化したジャックが僕を見上げた。
「大丈夫か、タスクよ」
「……うん。大丈夫だよ、ジャック」
なんとかそう言ってみせ、インターフォンを押す。間もなくパタパタと廊下を走るような音が微かに聞こえてきたあと、扉が開かれた。
「お待ちしておりました。龍炎寺タスクさん、ジャックナイフさん」
出鼻をくじかれた、というほどではなかったが、僕もジャックも目をしばたかせざるを得なかった。
玄関から現れたのは人間ではなかった。『その悪魔』は両手でスカートの裾を軽く持ち上げたあと、僕達に微笑みかける。
「……アムドゥキアス?」
「はい、悪魔楽士アムドゥキアスです。わたくし、只今バディを募集中でして、地球に滞在していますの」
悪魔、悪魔楽士アムドゥキアスは歌うような声色で答えてみせるが、未だに僕とジャックは戸惑っていた。
何故なら彼女は本来の服ではなく、メイド服を着ていたからだ。
「これはわたくしの趣味ですの。まあ、お入りくださいまし」
どうやら表情に出ていたらしいが、特に気にするそぶりも見せず、アムドゥキアスは僕達を家に招き入れる。
そのまま僕達をリビングに通したあと、アムドゥキアスは廊下に残り、「それではわたくしはこれで」と言って部屋に引っ込んでいった。どうやら彼女の役目はここまでということらしい。
改めてリビングを見渡し、そして真っ先に目についたソファには僕とジャックがよく知る人物が座っていた。
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