皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 海道大、カメ三兄弟(1/6)

「そうだ、海に行こう」

とある週末。ことはカガリがそう言い出して始まった。
季節は夏、しかも日本のという条件が加わると、湿気が多いせいで蒸し暑くなることは必須だ。
無論、私は抗議した。
いかに日本の夏が厳しいかを語った。そしてクーラーの効いた部屋の素晴らしさを語ってみせた。
しかし、語りに関してはカガリの方が完全に上手であった。

「麦わら帽子と白いワンピースで行こうと思ってるんだけど」
「行こう」

即答だった。
全ては麦わら帽子と白いワンピース姿のカガリが見たいがためだった。
が、一つ解せないことがあった。それはカガリの準備した荷物だ。

「何故、釣りなんだ……!」

カガリの手には釣り道具一式がある。一方の私はレジャーシート等の暑さ対策の道具を持っている。
完全に砂浜に行く装備ではないことを物語っていた。

「アスタロト。私が砂浜でキャッキャウフフするようなキャラだと思うかい?」
「思わない……そして私は騙された……」
「麦わら帽子と白いワンピースという服装に偽りはないだろう?」

カガリは空いている手で麦わら帽子をおさえ、くるりとその場で回ってみせる。ワンピースの裾から伸びる白い足が眩しかった。
出掛ける際の服装を基本的に制服としているカガリにとって、私服を着ることは大変に珍しい。
しかも夏という季節に麦わら帽子と白いワンピースだ。完璧、いや、正義としか言いようがない。
それにまんまと釣られた私はぐうの音も出なかった。釣りだけに。
無事近場の埠頭(ふとう)に着いた私達は手頃な場所にレジャーシートを広げ、ビーチパラソルを立てる。……いや、ビーチパラソルがあるのなら、やはり砂浜に行った方が似合うのではないだろうか?

「私は釣りがしたいんだよ」

カガリは釣り道具を広げ始め、渋々私もそれにならう。
さて、それから釣り糸を海に垂らして五分も経たない時にその事件は起こった。

prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -