皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 祠堂孫六A(1/2)

その日、生徒会室には会長と僕だけが在室中だった。
物静かでなにを考えているか分からない副会長や天然でのんびりとした会計長、さらに笑い声がやかましい書記長も不在とは珍しい。
会長に訊いてみたところ、書記長が席替えの結果に納得がいかず、ごねてホームルームが長引いているとのこと。
なるほど、実に書記長らしい。
会長への挨拶もそこそこに役員用の席に腰を下ろし、ちらりと会長の様子を伺う。
会長、黒岳カガリ先輩は僕よりも先に来て一仕事終えたあとらしい。書類を机の隅に追いやり、優雅に紅茶を飲んでいる。
一方僕はソファに浅く座り、鞄の中を漁った。デッキケースを手に取り、今日のバディファイトの授業を思い出す。脳裏に浮かんだのは、あの忌々しい男の顔だ。
つい、奥歯を軋ませてしまう。

「……今日は随分と苛立っているね、祠堂くん」
「ひえっ!」
「あ、ごめん。話しかけちゃ駄目だった?」
「い、いや……これは違うんですし……」

憧れのカガリ先輩の方から話しかけてくれるとは思わず、奇声を発してしまった、とは口が裂けても言えない。
カガリ先輩は「なら良いのだけれど」と呟いて、不思議そうに首を傾げた。

「なにか嫌なことでも?」
「べ、べべべ別になんでもないですしー」
「嘘。顔に『すごく嫌なことがありました』って書いてあるよ」

しまった、と両手で口を覆うが、時既に遅し。こういう時のカガリ先輩の観察眼には本当に恐れ入る。
カガリ先輩は話してほしいと言いたげな視線を向けていた。僕が話すまで待っていそうな雰囲気だ。
仕方なく、ことのあらましを簡単に説明した。
今日のバディファイトの授業で自分のデッキを使って実際にファイトする流れになったこと。
対戦することになった相手が挑発してきたこと。
そして、完膚なきまでに負けてしまったこと。
だから今、僕は不機嫌である、と。

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