皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 魔王アスモダイA(1/1)

「……お前は悪魔みたいなやつだが、悪魔よりタチが悪い」
「わはは、ここに来て早々悪態かい?」
「悪魔は真実を告げないだけで、事実は述べるぞ」
「そりゃまあ、私は真実も告げないし、事実も述べないけれどね。では不肖この私が敢えて事実を述べるなら、悪魔みたいなってのはそのものって意味にはならないってことだ」
「いちいち回りくどい言い方しやがって……それで、今回お前の目的はなんだったんだよ」
「最初に言ったじゃないか、アスモダイ。『こういうことは喋る気すら失せている。どうでも良い』とね」
「……まさか、ほとんど嘘を喋って引っ掻き回すのが目的だったのか?」
「わっはっはっ、ご明察だよ、アスモダイ。悪ってのは正義に嘘をつく。なにせ私は皆の敵だ」
「お前な……!」
「そう怒るなよ。私は本当のことだって言ってたんだぜ? 絢爛くんに『スタードラゴンワールドに帰ることが出来る』ではなく『未来に行くことが出来る』と言ったのも、龍炎寺くんに『絢爛くんがジャックくんを未来に連れて行ったことには意味がある』と言ったのも、嘘じゃなかった」
「……前者は完全に解釈違いを狙ったな」
「あったりー」
「お前の性格が相変わらず最悪だってのは分かった。……それで、後者は?」
「ああ、そっちは聞かない方が良いと思うよ」
「今さら渋るのかよ」
「……渋ったわけじゃなくて、あまり良い話じゃないからなのだけれど、まあ良いや。例えばアスモダイ。もしも絢爛くんがジャックくんをあの未来に連れて行かなかった場合、あのあとどうなっていたと思う?」
「どうなって……?」
「あの未来に行くことによって奇跡を起こすことが出来たのに、行かなかった場合ーージャックくんは死んでいたよ。普通に衰弱してね」
「……」
「選択肢を一つ間違えただけで、犠牲者が出る。けれど今回も犠牲者は出なかった。幸いにも、というより、辛うじて、かな。……きみ達は自分達がどんな場所に立っているかを少しは自覚するべきじゃないのかな?」
「そういうお前は、どうなんだ。色々と嘘ついて引っ掻き回しやがって」
「こんなものは可愛いものだろう? 引っ掻き回そうが回さまいが、きみ達の物語は成立する。私は居ても居なくても同じだ」
「……居ても居なくてもって、お前な」
「ようやく確信を得た。だから事実を述べよう。未門くんが欠けたら、龍炎寺くんが欠けたら、テツヤが欠けたら、如月兄くんが欠けたら、荒神くんが欠けたら、富士宮ちゃんが欠けたら……淵神くんが欠けたら、今回の物語は成立しなかっただろう。一方で、仮に私が死んでも今回の物語は成立しただろう」
「カガリ、お前なんの話を」
「私は死んだら陽太に、友達に会えるだろうなってくらいにおもっているよ。想っているし、思っているよ。……だから、まあ、引っ掻き回すのも今回きりにするさ」
「おい、カガリ! 話は終わってねえだろ!」
「終わったよ。全部終わった。……私から話すことなんてもうなにもない」
「っ、カガリ!!」



「テツヤのことは任せたよ、アスモダイ」

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