皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 龍炎寺タスクA(1/1)

バディファイトクラブの主催者がバディモンスターだった。その事実にバディファイトクラブの会場は未だ混乱から脱し切れていなかった。
しかも主催者が失踪したのだから、今後バディファイトクラブの運営および存続は事実上不可能だ。
当然と言えば当然の結果だろう。

「久し振りだね、龍炎寺くん」

そんな混乱の中、不意に背後から聞き覚えのある声が投げ掛けられた。
慌てて振り返ると彼女はいつものように制服姿で微笑んでいた。

「その様子だとやはり絢爛くんは行ってしまったようだね」
「カガリさんがなぜここに……?」
「一ヶ月ほどここに軟禁されてたんだよ。絢爛くん、もといヴァリアブルコードくんが私に用事があるとのことでね」

軟禁とは随分と穏やかではない。
けれど彼女は、黒岳カガリさんは相変わらず落ち着いている。
絢爛朱雀は、一体どんな目的で彼女を軟禁していたのだろう。
しかも一ヶ月とはかなり長期間だ。
疑問は尽きない。
なにから話を切り出すべきだろう。
僕が少しだけ視線を落として悩んでいると、カガリさんが先に口を開いた。

「絢爛くんがジャックくんを未来に連れて行ったことには意味があるよ」

思わず肩が反応する。
カガリさんの方を見ると、彼女は笑っていなかった。
ただ静かに、僕の様子をうかがっていた。

「どういうことですか? 彼は僕達を騙したんですよ?」
「さて、どうかな。案外この流れもすべて計算されたことなのかも。ま、これは部外者の私だから言える見解だけれど」
「計算……?」
「きみが思うほど、神サマは人間にもバディモンスターにも優しくないってことさ。神サマなんてものは信用する価値も信頼する価値もない」

まあ、それは私も同じか。
肩をすくめるカガリさんの真意はうかがい知れない。
カガリさんの言葉を、頭の中で反芻させる。
計算されたという言い回し。
そして、神様という表現。
彼女の言う神様とは、恐らく武装騎神デュナミスのことだ。
彼女は、武装騎神デュナミスの存在を知っている。僕とジャックがその竜に出会ったことも、知っている。
しかし、解せない。
絢爛朱雀がジャックを未来に連れて行ったことになんの意味があるというのか。
ぐ、と拳を握りしめ、カガリさんを見据える。

「……貴女は、なにを知っているんですか」
「私はなんでも知っているよ。私は皆の先輩で――皆の敵だからね」

存分に警戒すると良い。
そう言ってカガリさんは笑い、踵を返した。
以前会った時と同じに見えた笑顔が少しだけ寂しそうに思ったのは、単なる気のせいだろうか。

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