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!もしも主人公が真由成り代わり主だったら第二弾
!容姿は本編と変わらず。性格のみ真由に近い



▼前回の続き

陽泉高校新聞部部長のマル秘手帳の一部より抜粋。


元帝光中、現陽泉高校一年、野崎葵。柔道部所属。
表情筋があまり動かない、物静かで寡黙な美少女であると同時にひどく面倒臭がりな性格として有名。
寡黙過ぎるが故に声を聞いたことがある人間は片手で足りるとも言われている。

そんな少女漫画でも抜け出してきたような少女が氷室の目の前にいた。


「・・・えっと、」
「・・・あーじゃあ室ちん筆談は?
中学の時はそれで会話をしてたし」
「え、筆談?」
「うん」
「・・・分かった」

何処から出したのか一切分からない謎のB4サイズのスケッチブックと油性マジックを持って葵は氷室を感情がよく読めない目で見る。
氷室は試合とはまた違う謎の緊張感をひしひしと感じながら葵に問いかけた。

「葵ちゃんはそれで良いの?」

こくりと頷くと同時に差し出されたスケッチブックには『うん』の二文字。
・・・なんだろうこの得体の知れないもやもや感。

「じゃあ・・・好きな食べ物は?」
「・・・」

スケッチブックには先程の返事だった『うん』の間に『ど』が書き加えられ『うどん』という単語になっていた。

「・・・・・・・・・」
「あれ、葵ちんの好きな食べ物って手間がかからない物じゃなかったっけ?」
「アツシ!この子本当に面倒くさがりだ!
多分、というより絶対に好物=うどんじゃないだろ!!」
「だからそう言ってんじゃん」

面倒臭いなーという内心の言葉を飲み込みつつ紫原は嘆息する。

もう此処まで来たら普通に会話すれば良いじゃん。
・・・ていうかこの場面、確か黄瀬ちんにもあった気がする。


「葵ちん、普通に喋った方が絶対良いって赤ちんにも言われてたじゃん。
たまに喋った方が後々楽だしオレもちょー嬉しーし」
「?」
「・・・なんでアツシが嬉しいんだい?」
「んーそれはねー・・・」

葵と紫原は一緒にいる事が多い。
その為、通訳としてクラスメイト達に必要とされる事が殆どだ。
だが彼が無償でその仕事をこなすわけがない。
彼女より幾分かマシではあるが彼も大概面倒臭がりな性格である。

よってクラスメイトは紫原に通訳として仕事をして貰う為にお菓子で釣る事になったのだ。


「・・・とどのつまりお菓子が目当てか」
「まーね。まあそれだけじゃないけど・・・」
「・・・葵ちゃんはそれで良いの?」
「・・・・・・」

氷室の問いに答えるべく再びスケッチブックと油性ペンを取り出し、数文字を書いたところで不意に手が止まる。
その事により氷室と紫原は首をかしげた直後。

葵は手ではなく口を動かした。

「別に私に害が及ばなければ構いません」
((書く方が面倒臭くなったのか!!))



▼後日談

「ええ!?葵ったらあの氷室先輩と会ったの!?」
「羨ましい!!私も一緒に居れば良かったああああ!!」
「それで!?どうだった!?やっぱりイケメンだったでしょ!?
いくらアンタでもドキッとか感じたでしょ!?」
「・・・・・・」

頬を紅潮させ、興奮したクラスメイト達に囲まれた葵の目はいつも以上に死んでいた。
死んだ魚の目とよく漫画で表現されているが、多分あんな感じだろう。

紫原は少し離れたところで一人、お菓子を頬張り、観察しながら思考する。


(・・・・・・あの葵ちんがドキドキするとか想像出来ないし・・・・・・)

そもそも校内一美形とも言われている氷室を前にしても顔色一つ変えなかったし通常運転だった。
中学時代ではあの赤司相手でもメールの返事を催促された時、空メールで返すという伝説を作りあげた強者である。
ちなみにその後帝光バスケ部では彼女を密かに尊敬する者が後を絶たなかったのだが割愛。
話がそれた。


「それで葵どうだった!?」
「葵は見た目一級品の美少女なんだからいけるって!
そして私達に紹介して!!」
「・・・・・・」

肉食系女子って怖いなーと他人事のように聞き流していた紫原は次の菓子袋を破ろうとした、その瞬間。
聴き慣れた携帯のバイブ音により手を止め画面を開くと其処には一通のメール。

送信者はクラスの中心にいる葵からだ。

「・・・・・・」

無言でメールを開くと其処には一言。

『助けて下さい』

素っ気ないが彼女の必死にして切実なお願いに紫原は重い腰を上げる。
結局自分も葵に甘いなあと思うが、まあでも仕方ないだろうと言い聞かせるのだった。

いつか柔道部&ブログ編も書きたい。
早く最新刊を下さい。

20141228