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結局。
何とか葵を自室にまで梅太郎が運び、再びゲームを始めた御子柴達。
始めてから数分。
それまで沈黙を貫いていた火神がふと口を開いた。

「・・・ずっと気になってたんスけど、その『友田に聞く』って何、ですか」
「え?」
「あーこれか。
丁度良いな。野崎、お前全然友人を活用してないだろ。
やってみろって」
「・・・・・・分かった」

御子柴に勧められるがまま、梅太郎は眉間に皺を寄せつつ三択目の選択肢である『友田に聞く』を選択した。



『俺の情報、特別に見せてやるよ』

「・・・なんだこれ、です」
「見ての通り、友田は攻略キャラの好感度や情報を教えてくれるんだよ」
「・・・何でそんな不確定な事、こいつが知ってるんだ、です」
「確かに、言われてみればそうだな」
「もう其処は深く考えなよ・・・所詮ゲームだぜ?」
「いや待て!!・・・そうか。
さては主人公に気があるんだな!!!なんというアピール!!
「え!?」
「だからゲームが変わっちまうだろ!!!
何でもかんでも恋愛に繋げんな!!
んで火神!間に受けんな!これは普通の恋愛ゲームだ!!」


果たしてどの恋愛ゲームが普通なのかという議論はさておき。
本日何度目かの御子柴の絶叫が野崎家に木霊した。



  □■□



『なんでも聞けよな!』


「くっ・・・お前らが友田連呼するから俺も気になってきちまったじゃねえか・・・」
「・・・なんかすんません」
「すまん。真面目に頑張るよ・・・とりあえずゴールを目指す」
「ああ」

そして次々とイベントが発生し、進展する主人公と攻略キャラとの関係。
梅太郎と御子柴、そして火神は真面目にゲーム攻略の為にゲームを進めていったのだが目に止まるのはスチルではなく一人のキャラクター。

『俺が上手くごまかしとくから行ってきな!』

「・・・!!」
「っ・・・!!」
「・・・・・・」

『後は任せておけ!』

「・・・あの御子柴せんぱ、」
「嘘だろ・・・」
「友田・・・!!」
「・・・・・・」

『諦めんなよ!好きなんだろ!男ならいけ!バカヤロー!!』

「と、友田・・・・・・!!」
「お前・・・・・・!!」
「・・・・・・」

『卒業おめでとう、三年なんてあっという間だったな・・・。
俺、お前に会えて良かったぜ!』


御子柴と梅太郎が謎の衝撃を受けている中、火神だけドン引きしていた。
何故両隣りにいるこの二人はコントローラーを放り投げ、感涙し『友田ー!!』と叫ぶのか。
皆目見当もつかない。
同じ物を見ている筈なのにこの落差は一体。


「・・・先輩、大丈夫っスか?」

恐る恐る火神が尋ねてみるものの返ってきた台詞は残念ながら噛み合わない言葉の羅列の数々。

「くっ・・・お前・・・こんな主人公の為に三年間も・・・!」
「お前も青春しろよ!!!馬鹿っ!!」

打ちひしがれる梅太郎、床をどんっと容赦無く叩く御子柴。
どうでも良いが御子柴先輩、あまり床を叩かないで下さい、此処一応マンションです。
・・・ではなく。


「あー・・・じゃあ友田の為に物語を考えるってのはどうスか」

二人の居た堪れない空気を壊す為、火神は自分でも一体何を言っているのだろうと思うような台詞を言ってみたが、言った瞬間後悔した。

「っ!!そうだな・・・火神の言う通りだ!
こうなったら俺がお前の物語を描いてやる!!!」

そう言って取り出したのは十数枚に及ぶ真っ白な原稿用紙とシャーペン。
梅太郎の瞳に涙が浮かんでいたのはオレの気のせいだ、と火神は見ないふりをした。
突っ込んだら負けだ。
謎のお告げがそう本能に告げた。

「・・・・・・」
「ああ!幸せにしてやろうぜ俺達の友田を!!」
「よし!じゃあまずは相手だな。
火神、お前はどのキャラが友田に似合いだと思う」
「・・・・・・とりあえず友田がよく一緒にいて、一番愛情を向けていたら良いんじゃないスか?」
「そうだな。
つー事は、それに当てはまる奴、は・・・・・・」
「・・・・・・」

火神のかけないしの助言は何とか適用されたらしい。
梅太郎と御子柴が首を傾げて数分。
火神は一種の寒気が走った、その刹那。

二人の思考にかつて無い程の衝撃が走り抜けた。

『主人公じゃねえか!!!』

「・・・・・・」


何故そうなった。
火神はもう何も言えないまま、夜が更けるのを待つだけとなった。



そして夜が明け、葵と千代が梅太郎の漫画を見ての一言はごもっともとしか言いようがなかった。
ちなみにその時の二人の台詞は以下の通り。

「マジで何があったの!?」


二人が絶句した原因である漫画はいつも見慣れている少女漫画ではなく同性愛、もといBL漫画であったからに他ならない台詞である。

・・・また火神の知らない世界が開けられた。


お待たせしました『青空』続編です。
そしてアニメ第四話後編。副題は「火神の知らない二次元の世界」(笑
本当に主人公があまり出てこなかった。
そして氷室に至っては掠りもしなかったというとんでもないお話でした。

20141226