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!帝光時代
!戯言×黒子
!デフォルト名:哀川燐
!設定は此方



「黄瀬君に色目を使わないでよ!」
「なんでアンタみたいな奴がマネージャーなんだよ!」
「さっさと辞めちゃえ!」
「・・・っ・・・」


痛い、悔しい、苦しい、辛い、悲しい、酷い。

沢山の感情が渦巻く心の中、それを伝える術を自分は持っていなかった。
ただこの理不尽な暴力から耐えるのに必死だった。


早く終わってくれないかな、と何処か麻痺した思考。
最早他人事の様に考えてしまう、その思考は可笑しいと思うが身体を襲う痛みでそれ所では無くて。


「はっ、・・・!」
「生意気なのよ!」


ガッと蹴られたのは腹部。
痛みで麻痺していても尚、その衝撃は強烈だった。
頭が真っ白になってこのまま気絶してしまおうかと思ったその瞬間、その刹那。



「―――ふむ、この状況から察するにイジメ、否どちらかと言えばリンチか。
いやはや、巷で騒がれているモノを実際見てみると何とも言い難いな。
どう思ういーたん?」
「・・・いやどうと言われても・・・」

「なっ、」
「何よアンタ達!?」

「・・・・・・?」


誰、だろう。
聞き慣れない、低い声。


桃井は霞む視界の中、目を凝らすと其処には黒髪と茶髪の少女が二人いるのが分かった。


「四対一でリンチか。
これが小説やアニメだったら此処で颯爽と現れるのがヒーローって奴だろう。
やはりそういうのは幻想か」
「・・・じゃあ燐さんがなったらどうですか」
「いーたん、投げやりにも程があるぞ。ま・・・今はそれ所ではないか。
・・・おい其処の四人組」
『(ビクリ)ッ!』
「私の視界からとっとと失せろ」


黒髪の彼女の鶴の一声により、私を虐めていた女の子達が走り去る。
残ったのは私と、私を庇ってくれた人達の三人。
その事に安心してしまったのか、意識を手放してしまった。



  ◎



「・・・え・・・?」


瞼を開け、視界に映ったのは白い天井。
消毒液の匂いから察するに多分保健室だ。


「わた、し・・・?」
「・・・目が覚めた?」
「!?」


誰もいないと思っていた矢先に突然聞こえた声に瞠目した桃井。
しかしそんな彼女の変化に目もくれず、茶色の髪を肩辺りまで伸ばし、カチューシャをつけた少女は淡々と腰掛けたベッドから離れる。


「燐さん、彼女が目を覚ましましたよ」
「む、そうか」


そんな会話を耳に入れつつ、辺りを見渡せば汚れたタオルに洗面器、ペットボトルに入った水。
そして救急箱。


(手当て、してくれたんだ・・・)


どうやら気絶していたらしい。
気絶する前に見た、黒髪と茶髪の少女が保健室まで連れてきてくれたという事実に桃井は泣きそうになった。

虐められるようになってから、こうした親切を受ける事は無かったから余計に。


「全身打撲に切り傷擦過傷。
幸い骨折、捻挫が無かっただけマシか。女の嫉妬は怖いな」
「・・・燐さんも女性ですが」
「うわはは、いーたんは面白い事を言うのだな。
この私が汚い真似をすると思っているのか?」
「・・・・・・・・・・・・いいえ」


真っ直ぐな黒髪に勝気そうに釣り上がった目つき。
肩に羽織ったブレザーは独特で、この学校の女子でそんな着こなし方をした人は見た事が無かったから少し驚いた。

大して黒髪の女の子の隣りにいる茶髪の少女は最初は分からなかったがこうして見ると今まで会ったどんな人とも違う印象を受けた。
この世の全ての混沌を混ぜたような、異質な瞳。
漫画等で表現される『死んだ魚の様な目』というのがあるが、まさにソレだ。
助けて貰って酷い言い草だが他に言いようが無いのだ。

何故だろう、あの瞳で見られると酷く心が―――落ち着かない。


「あ、の・・・助けてくれて有難う・・・」
「お礼を言われる程してあげた覚えは無いが・・・ま、無事で良かったな」


それにしてもあの女子達、やはりもう少しシメておくべきだったかもしれんな。

貴女の『もう少し』は世間一般のと違いすぎますし、何より洒落にならないんで止めて下さい。


真顔でそんな事を呟いた黒髪の女の子・・・燐さん?に茶髪の女の子は無表情ながらもしっかりと制止の声をあげるという光景に私は今更な質問を口にした。


「えと、二人の名前を聞いても良いかな・・・?」
「む?私の名前を聞いたのか?」
「・・・」

茶髪の少女は沈黙するも、黒髪の少女は不敵に笑い桃井を真っ直ぐに見つめた。


「名前は哀川燐。
私が君を助けたのはただの偶然だからな二度目は期待をするなよ」
「・・・匿名希望で」

茶髪の少女―――もとい戯言遣いは深々と溜息をつきながら脱力しきった声でそう呟いた。

戯言×黒子ネタ!
いーちゃんをいれたのは予定外だったけどまぁ良いか。混合ネタだしね。
それはそうといーちゃん、桃っちに男の子だと思われていない事実(笑

20140707