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!大神×鳴門ネタ(≠成り代わり)
!デフォルト名:ヒカリ
!基本設定は此方



「神様、今日も良いお天気ですね」

「お天道様が顔を出してら、これなら作物もなんとかなりそうだ」

「本当にありがたい事、神様が見守って下さっているからなのでしょうね」



沢山の想いで"神様"は生きている。

そう、彼等の信仰心が強ければ強い程"神様"は力を増す。

しかし彼等は、神様は忘れていた。
平和が続けば、それは当然のものとなり信仰心というものは薄れてしまうという事を。


神様は自身の存在を忘れていく人間に悲しさを覚えても怒りは湧き上がりませんでした。
寂しさはありましたが神様は底抜けに優しかったのです。


神様は森羅万象を司る力を持っていました。
気持ち一つ変われば、それこそ指先一本で命を摘む事なんて容易い事。



この世の命が、蘇る―――。






「いたぞ!こっちだ!」
「チッ、もう追い付いてきたか・・・!」

湖畔の色の着流しを纏い、木々を抜けるように駆けるのは枯葉色の髪を持つ青年だった。
そしてその彼を追いかけるのは独特の面を付ける三人の男達。
彼等の関係は前者が抜け忍で後者が追い忍。追われる者と追う者。
捕まったら最後、命は草のように狩られるのは言わずもがな。

青年―――ウタカタは満身創痍になりながらも必死に追い忍を振り払おうとしていた。
そして僅かな隙を見て泡沫の術を彼等に浴びせて攪乱させる。


命を奪い合う行為は、彼等にとって長く感じたようで短い時間だった。
左腕に出来た、決して浅くない傷を掌で押さえながらウタカタは戦場となったその場所から急いで離れる。
背後には追い忍を示す面が転がり落ち、力無く倒れた体が地面に打ち捨てられていたがウタカタはもう視線を向ける事はなかった。




「・・・血を、流しすぎたか・・・?」

自身の中にいる獣のおかげでそうそう死ぬ事は無いが、その所為で命の危機に晒される事も確かにあったのも事実で。
複雑な感情が心に渦巻く。

揺れる景色、回らない思考、朦朧とする意識。

頭の何処かで警鐘が鳴る。
気絶してはいけないのに、身体が言う事を聞かない。

(オレも、此処までか・・・)

それが意識を失う前の最後の言葉だった。




  □■□




「・・・?」

場所は変わる。
四方八方、木々で覆われた森の中にひっそりと建てられた社があった。
その近くには簡単に結い上げられた、雪の如き白い髪とその髪と正反対の色である黒曜石の双眸。
二十歳になるかならないかの容姿を持つ女性が身に纏うのは古代の衣装に近く、重ね着に重ね着を着こんでおり、傍から見ると衣装に着せられているような印象さえ受ける。
しかしあくまでもそれは印象であって実のところ一枚一枚は薄い。
故に機動力としてはそれなりにあるのだ。

真っ白な睫毛が縁取る黒曜石が僅かに疑念の色に染まる。
次いで眉間に皺を寄せた。

「僅かに、血の臭いが・・・」

彼女、ヒカリは故あって鼻が良い。
利点と欠点は紙一重なだけあってその分弱点にもなるのだが、今はおいておこう。
ヒカリは臭いが示す方向を十秒程睨み続けた後、静かに歩き始めた。

―――静寂な森から草を踏み分ける音が響いた。



  □■□



「・・・っ」

傷が焼けるように痛い。
だがこの痛みはある特別なチャクラで全身の傷を治癒しようとしているものだ。
半ば無理矢理起こされたウタカタの視界はぼやけていたが、次第に何処かの建物の天井だという事に気付いた。

「・・・此処は、」

自身の里でもない。誰かに助けられたのか。
上半身を起こすと丁寧に包帯が巻かれており、ついでに言えば白衣を着せられていた。
いつもの着物は、と視線を更に動かそうとした時カタン、と小さな音が響いた。

「っ」
「あ、目が覚めたのですね」

障子を半分ほど開けて入ってくる、白髪の女子に目を丸くする。
女性―――ヒカリの白髪の下にある額や首筋に赤い隈取があるのを見たのと、己の中の"獣"が騒いだからだ。
しかしそれも一瞬。
瞬きをすれば隈取は消え、"獣"の鳴き声も止んだ。

・・・この女、


「怪我は大丈夫ですか?」
「それは問題無いが・・・お前がオレを運んだのか?」
「そうですよ?」
「・・・」

白を基調とし、紅のラインが入った着物を一番上に着ているヒカリを見る。
纏っている着物の量は多く一見して分からないが、華奢に見えて実は怪力だったりするのだろうか。
もう一度彼女を見ると、やはり体躯としては一般女子と何ら変わらなさそうに見えるのに、成人男性を一人運んだという事実にウタカタは首を傾げた。

「・・・そうか。
助けてくれた事については礼を言う。助かった」
「・・・ふふ、どう致しまして。
あ、私はヒカリと言います。貴方のお名前を伺っても宜しいですか?」
「・・・ウタカタだ」
「ではウタカタさん、早速ですがもう少し眠った方がよろしいかと思います。
怪我人ですし、起きているのも辛い筈です」
「だが、」
「貴方が着ていた服もほつれていたり血が付いていて今洗濯中なんです。
どっちにしろ休んで下さい」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・分かった」


無言の沈黙の末、勝利をもぎ取ったのはヒカリ。
有無を言わさない笑顔にウタカタが屈服したとも言える。
ちなみに本人に悪気が無いというのが厄介所なのだがウタカタがそれを知るのは数日後の事だ。





『・・・もうお気付きかもしれませんが、今の方は常人とは少し違うようです』
「・・・え?」

頭に木霊する妙齢の女性の声。
ヒカリは驚く事無くその声に耳を傾ける。
ただしウタカタの着物のほつれを直す行為は中断せずに。

(・・・どういう事?)
『"私"と似て非なる存在を宿している、可能性です』

あくまで可能性だと小さく、尚且自信無さ気に話す"彼女"にヒカリは苦笑する。
今ヒカリは縁側におり、その背後には眠っているウタカタがいる為、声に出すのは流石に憚れた。
もしかしたら起きるかもしれないからだ。
彼は言わなかったが忍である事は既に予想している。

「・・・」
『彼の近くには忍の方と思われる男性を見ていますし、恐らく彼は、』
(・・・抜け忍の可能性が高い、という事。
三人の死体の近くに追い忍を示す面もあったから恐らく・・・)

ヒカリは未知のものに対する不安と自身に対する危険が迫っていないかという想いに溢れた"彼女"にそっと笑いかける。
大丈夫だと。いざとなれば"彼等"の力を借りるから。

(それでも彼を助けた事に後悔はしていない。
私も、貴女も。違わないでしょう?)
『・・・確かに。逆に助けなかったら後悔していました』

女神の如き優しい声が再び脳裏で木霊する。
その台詞を最後に"彼女"の意識は沈んだ事に静かに悟ると同時にもう一つの事に気付いた。


「・・・別に裁縫で直さなくても、『画龍』で直せるんだった」

失われたものを蘇らせる事が出来る筆しらべ、『画龍』は壊れたものを直せる能力。
数ある能力のうちの一つ。

ヒカリはもう直してしまった衣装を見直した後、まあ良いかと軽く息をつく。
次いで複数の気配に視線を向け、聴覚をいつも以上に働かせる。

「・・・どなたでしょうか」
「奥に居る男に用がある」
「それはそれは。申し訳ありませんがお引き取り頂けますか。
彼は怪我人ですので」

ヒカリはそう言うが内心はこの言い分が通らない事を知っていた。
霧隠れの追い忍を示す面。
それを付ける三人の忍。

「・・・残念だ」

戦闘開始を告げる声。
華奢な体躯と儚い少女めいた容姿が一瞬の隙を生んだのかは分からないが、彼女にとって指先を動かせればそれで良かった。
つまり。その一瞬は彼女にとっては充分過ぎる程の時間だったという事だ。


「それは此方の台詞です。
―――幽神、『霧隠』―――濡神、『水郷』―――濡神、『水飛』」



外での会話は彼女以外誰も知らない。
会話はおろか戦闘寸前の出来事があったという事も。
ヒカリの目が悲しみと痛みを孕んていたという事も。

―――彼の目はまだ覚めない。


という事で設定としては大神『アマテラス』を宿すなんちゃって人柱力の主人公。
ウタカタ様が好きすぎて書いてみました。
アニメで全て持ってかれたよ人柱力と尾獣可愛すぎてどうにかなってしまいそうで怖い誰か一緒に語り合いませんかマジで特にウタカタ様について!←落ち着け

20140512