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!彩雲国物語
!デフォルト名:翡翠


翡翠は耐えていた。

「・・・・・・」

原因は只一つ。

ピーらーロリー♪

笛、とは形容し難い音色基い怪音を撒き散らす存在にとうとう翡翠の堪忍袋の尾が切れた。

「・・・・・・いい加減にしなよこの安本丹!」

翡翠が叫ぶと怪音を撒き散らせていた青年の藍色の双眸を翡翠へと向けられる。

ぴーひゃーろりー・・・ピタッ



「・・・いきなり大声を出すとはどうした翡翠」
「どうした、じゃない!いい加減に其の笛を止めろってさっきから言ってんだろ!」

くわっと怒る翡翠に対し、心底理解出来ない、といった表情を出す青年―――藍龍蓮。

「何故だ?」
「時間を考えろって言ってんの!
今何時だと思ってんのさ!?」
「ふむ、星を見るに子の刻といったところか」
「そうだよ、皆々様にとっては身体を休める、貴重な時間なんだよ。
なのに君は――!」

龍蓮に怪音を撒き散らせているという自覚は無いが、他の人間が聞けば間違いなく生気諸々吸い取られる魔の笛である。
それをよりにもよって真夜中に――!

翡翠は説教も兼ねて龍連に苦情を言ってやろうと口を開こうとした。
が。

「それもそうだな。
世間では所謂就寝時間というもの。・・・では翡翠」
「・・・何」

説教をしようと思った矢先に龍蓮が発した言葉で、うっかり『就寝』が『終身』へと脳内変換しそうになった翡翠。
しかし、伊達に何年もこの変人と一緒にいた訳ではない。
すぐに持ち直し、何とか返事を返した。

「私もそろそろ寝ようと思う」
「・・・そう」
「だから共に寝ようではないか」
「何で其処に行き着くのか二十文字以内で教えて欲しいな!」

眦をぎりり、と上げる翡翠に龍蓮は微笑し一言。

「私が片時も離れたくないからだ!」
「〜〜〜〜〜ッ!!」

文字通り絶句し口を開閉するしかない翡翠の身体をいとも簡単にヒョイ、と持ち上げると龍蓮は声高らかに言葉を放った。

「では行こうではないか翡翠!」
「ちょ、離してよこの馬鹿龍蓮!
私も君もいい歳なんだから一人で寝れるだろ!?」

真夜中なのにも関わらず騒がしい二人に対し苦情が届くまで残り僅か。


utpr以外では初めてのジャンル、彩雲国物語です。
お相手はご覧の通り龍蓮。
この娘も結構前から作っていた娘。
口調は黎深の奥方、百合姫(譲葉)を参考にしています。
いつか連載したいな・・・。

20120426