「ぶつかっておいて何だその態度はよー」
「俺らの事知らねーの?だったら今日教えてやるよ」
緑間と高尾がいつも通りふざけあって(緑間は心底鬱陶しそうだったが)いた時、運悪く不良グループにぶつかってしまったのがきっかけだった。
あれよあれよと言う間に十人近くの不良が秀徳バスケ部に周りに集まってしまった。
緑間と高尾は理由は違えど身近に不良との接点があった為、宮地達と比べるとまだ落ち着きを持っていたが、この状況はお世辞にも良いとは言えない空気だった。
「・・・・・・」
(あああったくバスケ部とか関係無かったら今すぐ轢いてやるのに苛々するというか)
(やばい宮地が切れかかってる)
「えーっと、・・・」
後ろの殺気立っている約一名がいるが、高尾はこの後の展開に冷や汗をかいていた。
何故ならこの状況は中学時代の『忘れてはいけない記憶』に類似していたからだ。
忘れるな、決して、何があっても。
どれだけ時が過ぎても、自分が"彼女"にした事は許されない。
そう、彼女に贖罪をするまでは。
その言葉が脳裏にちらついた高尾の耳に、高い声が響いた。
「みーどりーたなーびくー」
「・・・・・・!?」
「なんだあ・・・?」
分かる人には分かる。
最強にして最凶、不良の頂点に立つ存在が在校していた校歌。
十人近くいた不良の内何人が気付いただろうか。
「お、おいこの歌、」
「っやべえぞ、もしかしてアイツが近くに、」
「あ?何ビビってんだよ?」
ぱたた・・・と小さく響く羽音。
思わず緑間達が振り向くと其処には一部見慣れた黄色い小鳥が飛んでいた。
つぶらな黒い瞳が自分達を見下ろしている。
「・・・っ」
ひゅう、と無意識に息を呑む。
左胸がどうしようもなく痛い、だってあの黄色い小鳥は、
「何か様子が変だな」
「あの鳥に何かあるのか?」
「先輩達は知らないのですか、あの双子の話を」
「双子?」
「どうしたあ?」
「たかが鳥にビビってんじゃ、」
「草食動物が何私の前で群れてるの?
―――咬み殺されたいのかい?」
びりびりと鋭く冷たい、まるで抜き身の刃みたいな殺気に鳥肌が立つ。
否、そんな可愛いものではない、まるで処刑台にいるかのような幻覚が襲った。
こつ、
「言い訳なんて聞かないよ、何にしても君達は今此処で―――咬み殺す」
「ひ、」
「おいまさかあの女、」
「ひば、ぎゃああああっっ!!」
彼女、雲雀千歳の纏うセーラー服が翻り、鈍色のトンファーが風を切った。
††
辺りは血の海、ではなく、不良達の体で作られた山が出来上がっていた。
その山の頂点に立つのは言うまでもなく短く切り揃えられた黒髪を風に靡かせた少女。
『・・・・・・』
「ヒバリ!ヒバリ!」
「・・・弱いね、否この場合弱いから群れるのかな。
まあどうでも良いか・・・」
彼女が着るセーラー服が秀徳のものだと最初に気付いたのは宮地だった。
「おい、あれうちの学校のやつか?」
「え?・・・あ、そういえばそうだな」
「!」
「・・・?おい高尾?どうした?」
「大坪、どうかしたのか?」
「いや高尾がさっきから動かな、」
「・・・・・・ひば、さ、・・・・・・」
「ヒバリ!ツヨイ!」
「・・・五月蝿いよヒバード」
依然冷たい光を宿らせたまま千歳は頭の上に乗りかかったヒバードに声をかける。
視線を上に向ける事で千歳は其処でようやくある事に気付いた。
「千歳さん、早、いですよ!」
「沢田綱吉、・・・・・・!」
そして、彼女を追いかけていた綱吉もこのタイミングで追いついた。
「・・・・・・たかお、く、」
「雲雀さ、」
容姿を変えたところでもう言い逃れは無理だった。
両手に持つ鈍色のトンファーが何よりの証拠、この武器を携帯している人間なんて雲雀恭弥と自分位しか思い付かない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
雲雀と鷹の視線が、真の意味を持ってこの時交わった。
お待たせしました、主人公と高尾の再会です。
緑間達空気で申し訳無いorz20140224