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「お前は誰なのだよ」
「・・・」

千歳は緑色の男に既視感を覚えた。
・・・あれ?

「おい・・・?聞いて、」
「ヒバリ!ヒバリ!」
「っ」

ぱたぱたと小さな羽音を響かせてやってきたヒバード。
・・・愛くるしい顔に騙されてはいけない。
何でこの小鳥はすぐに何処かへ飛んでいくのか。
飼い主に似ると言うべきか、こういう所は弟によく似ていると思う。


さて目の前にいるこの明らかに2mあるのではないかという巨人をどうしよう。
恭弥ヘルプミー!お姉ちゃんに知恵を下さい!
どうする自分!
流石にクラス分けが張り出された掲示板みたいな真似はしちゃいけないのは分かってるけど、後残された道は・・・此処はもうトンファーで気絶させて記憶ごと消去させるべきか・・・!?(大混乱)


「!?(ゾクッ)」
「・・・人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗りなよ。
私はこの小鳥を返して貰いに来ただけで、もうこの通り用も済んだし。
今回は見逃してあげるけど次会った時はさっきの言葉を覚えておいてね」

はっと何処か鼻で笑ったかのような嘲笑付きで返された言葉に緑間は一瞬体が凍り付いた。
・・・この口調は何処となく赤司を思い出す。
ではなく。


さっさと帰ろうとする千歳の背中に向かって緑間はある一つの可能性を投げかけた。
最後に会って十年近く経つが先程の台詞。
過去に一度、オレはその台詞を子供の頃に言われた事がある―――。


「・・・人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗りなよ」



「待て千歳!」
「・・・っ!?」

短い黒髪、切れ長でキツイ印象を与える黒曜石の瞳。
最後に会ったのが約十年前だから顔立ちは大分幼さは抜けてきているが、間違いないだろう。


名前を呼んだ事で驚愕に染められた表情。
立ち止まった足。
振り返る事でより彼女の顔が鮮明になる。
・・・ああ、やはり。


「・・・久しぶりなのだよ千歳」
「・・・は?」
「?雲雀千歳だろう。
オレの家の近くに住んでいて、子供の頃よく一緒にいたのを覚えていないのか?」
「・・・・・・・・・え、まさか真ちゃん?」

千歳は埋もれていた記憶の中から引っ張り出してきた名前を口にする。
そして悟る。
先程の既視感はもしかしてこれの事かと。


緑色の髪、黒縁眼鏡、長い下睫毛。
私の記憶の中の小さな男の子は確か・・・。


「ええええええええ」
「・・・何なのだよそのリアクションは!」
「いやいやだって無いよこれは。
私の記憶の中にある真ちゃんはこんなに可愛くて、たかが虫一匹で私の服を掴んできた草食動、」
「うううう五月蝿いのだよ!!
十年も経っていて且つ男がいつまでも可愛くてたまるか!
ていうか、そういうお前も女子のくせに女子に対して普通に接せなかっただろう!
普通に声をかけていけば良いものの、どもったりしてまともに話せず終いだったではないか!」
「はあ!?女の子は男子とは違ってか弱いんだよ!?
力とか無いし男子にはないしなやかな仕草とか!」
「具体的な例を出すな!まるで変態なのだよ!」
「舐めるなドSだーーー!!」
「そうゆうこっちゃないのだよ!」

お互い息を切らしながら相手を睨み付ける姿は何とも言い難いものだった。
誰もが「キセキの世代」と持て囃される緑間とヤンキーのトップにして雲雀恭弥の姉とは思わない光景である。
因みに彼女の弟が見たら他人の振りをするに違いなかった。


「五月蝿い納豆ぶちまけてやろうか」
「千歳お前本当は忘れてはいないだろう!?」

緑間のその言葉に千歳は苦虫を数百匹噛み締めたような表情を浮かべた。
そうだ、彼とは小学校に上がる前まで一緒に遊んでいた事が多かった。
ちなみに恭弥はもうこの時から一匹狼だったので三人で遊ぶ機会はそんなに無かったのは余談である。


「・・・思い出したよ。
私を散々虫から追い払う為だけに呼んでいた緑間真太郎君でしょ?
私だったから良かったものの恭弥だったら咬み殺されているよ」
「余計な事まで思い出すな。
・・・中学時代はずっとお前達姉弟の噂が絶えなかったのだよ。
素行不良とみなされても可笑しくなかったのによく秀徳に入れたな。
此処は不良が入れる位学力は低くはないのだが」
「・・・それ私を馬鹿にしているの?咬み殺すよ」
「・・・・・・」

女の子大好きな主人公。
そして高尾君が出てこない。緑間夢ではない筈なのに・・・あれどうしてこうなった。
主人公と緑間は幼馴染設定。


201312XX