Gift | ナノ
"新型の幻の六人目"黛名前に恋心を寄せ、想いを実らせるべく赤司は奮闘している。
この前も受験の息抜きという名目でデートに誘ってみたものの、自分の思う通りに名前をリードすることが出来なかったことが余程ショックだったのか、すっかり落ち込んでいた。

「それでそれで!!手は繋いだんスか?!」
「ちゃんと黛さんをエスコート出来たの!?」

そのことをキセキに報告&相談すべくファミレスに集まるようキセキに呼び掛けたら(若干不本意な面々もいるがその説明は割愛する)全員来てくれた。
恋バナに目敏い黄瀬と桃井は赤司の落ち込み具合など知る由もなく、この前のデートがどうだったかを早速聞き出した。

「リードしようと手を繋ごうとしたら腕を掴んで、力み過ぎたのか爪が食い込んで痛いって言われて」
「…そんで?黛サンはどうしたんだよ」
「名前が手を繋ぎ直して、その後も名前が色々と…」
「それさ、全然リード出来てねーじゃん。
赤ちんより黛さんの方が男らしいんじゃねーの?」
「紫原!言葉を慎むのだよ!!」

紫原の容赦ない言葉に緑間が注意するも時すでに遅し。
負のオーラを漂わせて赤司は机に突っ伏してしまった。

その姿を見たキセキ達は思う。
中学時代、自分達を従えていた赤司が好きな女性が出来たことでさえ驚いたのにその相手に対して空回りばかりするなんて考えられなかった。
否、想像しただけでも恐ろしい。

「げ、元気だして赤司君!!」
「そうっスよ!!」

桃井と黄瀬はどうにか元気付けようとするも、逆効果だったらしく赤司は益々落ち込んでしまった。
こんな時どうすればいいのかとキセキ達は途方に暮れた時…。

「何やってるんだよ」

鶴の一声ならぬ、名前の声がしてキセキ達は振り向き、赤司は顔を上げた。
其処にいたのは私服姿の名前だった。

「ま、黛さん!?」
「どうして此処に?」
「昼ご飯を食べに来たんだよ。この後はまた図書館で勉強。
それで…お前等は何を集まってるんだ?」
「そ、それは…」

正直に答えた名前の質問にキセキ達は言葉を詰まらせる。
赤司がこの前のデートのことで悩み、自分達に相談を持ち掛けてきたなんて言えるワケがない。
どう答えたらいいか口籠っているのを名前は訝しげに見ていたが、ふと何かを思い出したような表情を浮かべて鞄の中に手を入れると綺麗な包みを取り出した。

「赤司。手を出せ」
「?」

名前に言われるままに赤司は両手を出した。
名前は赤司が両手を出したのを確認すると手に持っていた包みを赤司の掌に置いた。
中身はお菓子なのか、仄かに甘い香りが漂う。
お菓子が好きな紫原が物欲しそうに赤司の手に収まった包みを見つめている。
それに気付いていない赤司は目を白黒させながら名前を見上げている。

「この前のデート、お前が思うほど悪くはなかった」
「え」
「恋愛に関しては物分かりの悪い奴だな。楽しかったってことだよ」

名前が浮かべている表情は何時もの無表情ではなく、優しい笑みだった。
その笑みにキセキ達が呆気にとられたのか、ポカンとしているのに名前本人は気にも留めず鞄を持ち直した。

「これはその礼だ。味わって食べろよ」

そう赤司に言い残した名前は片手を振って颯爽と去っていった。
呆気に取られたキセキ達は我に返ると赤司の手にある包みを見る。
キセキ達も赤司の手の中にある包みに注目する。

「この匂い…中身はチョコだ」
「紫原の嗅覚は鋭いからそうなんじゃねーの?」

紫原と青峰は物欲しそうに包みを見つめるが手は出さないのは相手が赤司だからである。

「そういえば今日はバレンタインっスね」
「あ、赤司君!コレは脈ありだよ!!」

黄瀬が思い出したように手を叩くと桃井は自分のことのように喜んだ。

「人事を尽くした甲斐があったな」
「赤司君。早速ホワイトデーのお返しを考えましょう」
「あ、あぁ…」

赤司は名前にバレンタインのチョコを渡されて動揺しているのか、頭から湯気が出そうなくらい耳まで顔を赤くさせて震えていた。

その晩、赤司は名前のプレゼントである手作りブラウニーを噛み締めて食べ、その味は今まで食べたお菓子の中で一番美味しかったことや名前の惚気を綴ったメールをキセキ全員に送ったとか。

  受験の息抜きにデートは如何?
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三周年記念として七星様に頂きました!
upするのが大変遅くなりましたが、改めて有難う御座います!(*^^*)
黛成り代わり主はやはり面白く、今回赤司が見事に翻弄されるというシチュエーションは結構私の好みだったので嬉しいです。
いつも有難う御座います、これからもよろしくお願いします(^^)

20150321