!来神組高校生
!臨也が只のシスコン
私の名前は折原散葉。
ご近所で有名な折原家の二番目の子供であると同時にあの折原臨也の妹でもある。
・・・兄の実態を知ってから私は何万回も確認したけれど残念無念、悲しくも事実だった。泣きたい。
「ホント散葉って鈍臭いよね、おまけにトロ臭いし。
ああもう俺の計画が台無しになるかと思ったけど、まあ俺が練った計画だから散葉一人がどうこうしようと狂う訳が無いか」
「・・・・・・」
正座する私、仁王立ちするイザ兄。
イザ兄は私を嫌っているらしい。
だってずっとこんな調子で私を意味無く貶しているのだからそう思いたくもなる。
かれこれもう一時間経つ・・・足の感覚が無くなってきた。
面倒だし、このまま沈黙しておこうと思っていたらイザ兄の口から爆弾が投下された。
ソレはいとも容易く、私の心を傷付けた。
「散葉、お前は本当に俺の妹なの?」
「っ・・・!」
臨也本人には言わないものの、唯一の兄として慕っていた散葉の夕焼け色の双眸が酷く揺れる。
揺れて、戸惑って、そして。
♂♀
「・・・臨也、鬱陶しいから他所に行ってくれない?」
『・・・どうしたんだアイツ?』
「大丈夫だよセルティ。ただの病気だからさ」
『?』
セルティが首を傾げるその姿はまさに妖精の如く可愛らしく、何にも勝るモノだったが此処で臨也から離れたら更に面倒臭い事になるのは目に見えていた。
・・・臨也はというと現在落ち込んでいた。
底辺という底辺まで只管。・・・底なんてあるのかと思う程。
勿論、浅い仲であるが付き合いは長い新羅にはすぐに原因が分かった。
恐らくというか殆どの確率で彼が溺愛するすぐ下の妹、折原散葉絡みの事なのだろう。
「まーた散葉ちゃんに酷い事を言ったんでしょ臨也」
「・・・五月蝿い。
新羅が散葉の名前を気安く言わないでくれる」
「名前を呼ぶのもダメなの?
どれだけ心が狭いのさ、だから散葉ちゃんに嫌われるんだよ」
ぐさっ、と何かが臨也の胸から背中にかけて突き刺さった音が聞こえたが気の所為だろう。
新羅は冷ややかな視線を臨也に向けたままからなのか、声も氷のように冷たい。
「散葉ちゃんも可哀想に、意味無く実の兄から毎日貶されて。
僕だったら口を梅干にする薬を投与しているよ」
『新羅、それを他人に投与したら私は絶交するからな』
「何で!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
依然無言。
今回の臨也は一体何を言ったのやら。
新羅は隠さずに深々とため息をついた。
この馬鹿兄は妹を溺愛している。
新羅に長時間の惚気を語っているのに、肝心の本人には方向性を間違えまくった愛情表現で接している。
・・・一体何故、どうしてこうなった?
「今度は一体何を言ったのさ?」
「・・・・・・」
臨也の小さな声で話してくれた内容に新羅は案の定な展開に思わず目頭を押さえた。
俺、次会ったら優しくしてあげよう・・・。
「臨也、何度も言っているけど散葉ちゃんの事が可愛いからって憎まれ口ばかり言ってるとそのうちグレちゃうよ?」
「俺だってこの癖を治して欲しいよ、可愛くて可愛くて可愛くて可愛くて愛らしい散葉と兄妹で俺は嬉しいのに!
どうなっているんだホントにこの口は・・・!!」
その内、机を額で折るんじゃないかと思える位取り乱し、頭を打ち付ける臨也に、新羅は本日何度目かのため息を吐いた。
「呪いでもかかっているんじゃないの?」
「どうせなら散葉が一生折原姓でいられるような呪いをかけてくれたら良いのに・・・!」
『・・・何かの病気なのか?』
「病気は病気でも不治の病だよセルティ・・・。
それ故に処方箋なんて無いし、自力で治して貰わないと。
・・・ねえ臨也、いい加減にしてくれない?私も暇じゃないんだ」
「新羅に分かるか否分かってたまるか俺のこの張り裂けそうな思いが、胸が!
俺の言葉で泣く寸前まで揺らいだ瞳!
あれを見た瞬間、俺は死にたくなった」
『・・・・・・・・・』
いっそ死ねば良いのに。
新羅とセルティの心中が一つになった瞬間だった。
+おまけ+
「うっうっ・・・」
「散葉大丈夫っスか?」
「だ、いじょうぶじゃなっ・・・」
涙腺が崩壊した恋人に苦笑しながら黄瀬は指通りの良い髪を撫でながらあやす。
「またお兄さんっスか?」
「ぅっ・・・」
「・・・散葉、オレの所に来る?」
「・・・・・・・・・・・・・・・え、」
「そしたら傷付かなくて済む」
「りょ、たく、」
「ね、どうする?」
「わ、たしは、」
シスコンをこじらせた兄とフライング彼氏に挟まれた妹
一周年企画第五弾はあんず様に捧げます!
もしもリクエストなのでどうせならシスコン臨也にしてしまおうと思い至り、その結果がコレです。あんず様どうか殴ってやって下さい。
臨也は普通にシスコンを表に出さないだろうな、と思ってこんな感じに。でもきっと携帯のフォルダは主人公まみれになっていたら良い。惚気は新羅達に報告。誰得?勿論俺得です!
素敵なリクエスト、有難う御座いました!
20130919