過去企画 | ナノ

!主人公:赤司家使用人



「栞さん、征十郎さんがお弁当を忘れてしまったから帝光中学まで届けて貰って良いですか?」
「・・・分かりました」

・・・確か征十郎君は今日部活の練習試合だって言ってたっけ。
とりあえず携帯で報告しておこう。
後兄さんにもメールしておかないと。


栞は無表情で携帯を操作しつつ、自室に足を進める。
理由は勿論支度をする為だ。



  ♂♀



栞の兄は赤司家の警備員として働いており、栞は侍女紛いの役割についている。
といっても専ら赤司家嫡男、征十郎の世話役に近い。
それは家の中で一番年が近いから、という理由が大半なのだろうが。


そして現在。
私立帝光中の前に制服姿で栞はいた。
片手には勿論少し大きめの弁当が。


「・・・どうやって征十郎君に届けようかな」


だけどとりあえず体育館か。
栞は普段校舎では接触する回数が少ない主に会う為、徐に体育館へと足を向ける事にしたのだった。




  ♂♀



「赤司、どうしたのだよさっきからバッグの中身ばかりを見て」
「緑間か・・・否大した問題ではない」
「何かあったのかよ赤司ー」
「だから大した問題じゃないと言っただろう」
「良いじゃないっスか赤司っち!」
「ただ弁当を忘れただけだ」

『・・・・・・・・・』


あっけらかんと放たれた台詞に一瞬キセキの面々は流しそうになった。

今日は大事な練習試合だ。
例え公式でなくても負ける事は許されない。
その練習試合は午後もあり、その主将である赤司が出る事は決定事項で・・・あれ結構ヤバくない?


「だ、大丈夫なんですか赤司君・・・?」
「赤ちん試合が終わるまで体力保てるのー?」
「そうだな今日は休みで購買なんて無いし、かといってコンビニに行くのも面倒だ。
・・・だから、」
『(ビクリ)』


赤司の赤い瞳に剣呑な光が宿るのと同時に全員の背筋に悪寒が走った。

・・・嫌な予感がするのは気の所為だろうか。
寧ろ気の所為であってほしい。


そんなキセキの願いを他所に赤司は案の定鬼畜とも言える台詞を口にした。


「という訳で黄瀬、お前の弁当を寄越せ」
「本当にイビリ以外の何物でもねえ!!
嫌っスよいくら赤司っちでも!!」
「冗談だ本気にするな」


嘘だ!と叫びたかったがそんな事を言おうものなら本当に昼食を取り上げられかねないので黄瀬は素直に口を閉ざした。
人間、何度も経験すれば流石に分かる。


「赤司っちが言うと本気に聞こえるっスよ・・・」
「あ、オレもそー思った」
「・・・ほう?」


ひくり、と口元が引き攣らせた赤司、地雷を踏んだと顔を青ざめた黄瀬と青峰。
他のキセキは明日は我が身、と心なしか数歩下がっているのを見て内心で二人は裏切り者と叫ぶ。

その次の瞬間。


「・・・そうされると私が此処に来た意味がなくなってしまうので考え直して頂けると助かるかな」
「・・・・・・栞?」


こつ、と小さく足音を響かせながら登場したのは艶やかな黒髪を僅かに揺らしつつ静かに佇んだ栞の姿だった。


「征十郎君、これ忘れていったお弁当」
「っ、すまないわざわざ届けに来てくれたのか」
「・・・大丈夫。仕事、だから」


突如現れた彼女の存在にキセキ一同は赤司に詰め寄る。
その時の顔の表情はなかなかの気迫があったのだが其処は割愛。


・・・いつもそれ位の気迫で試合に臨めば良いものの・・・。
赤司は内心そう思ったのと、普段と同じ賑やかさが周囲の空気を震わせたのは同時だった。


「え、平和島さん!?」
「待て、何故赤司の弁当を平和島が持ってきているのだよ!?」
「・・・どちら様ですか?」
「赤ちーんその人誰ー?」


彼女を知る桃井達は驚愕の声を上げる一方で黒子達は疑問の声を上げる。
そんな彼等に赤司は面倒臭いという感情を前面に押し出した表情でただ一言告げた。


「何故も何も・・・栞は俺の世話役だ」
「不本意ですが」


赤司の爆弾発言を否定しなかった栞の態度に彼女を知る桃井と緑間は更に悲鳴にも似た声を体育館にて響かせるのだった。

  赤い主人と使用人と

一周年企画第二弾は東雲様に捧げます!
考えた事のないネタでしたので書くのが楽しかったですw
リクエスト、有難う御座いました!(*^^*)

20130827