過去企画 | ナノ

「・・・そういえば以前会った彼は今頃どうしているんだろうね」
「・・・彼?」
「そうそうほら、この間会っただろう?
大胆不敵にしてやる事為す事あらゆる面において全て規格外の彼の事だよ」
「・・・・・・誰の事か知らないが、そいつもつゆりにだけは言われたくないんじゃないか」

至極真っ当な事を半纏は突っ込んだ。
それは傍から聞いていたら失礼にあたるのだろうが相手はつゆり。
彼女を知る人間ならば半纏の言う事は十二分に正しいと断言出来る位、彼は的確な言葉を放っていた。


「まーそれに関しては反論はしないけど・・・ていうか君もなかなかに酷いな。
それに半纏も僕の事は言えないだろ、君も人外なんだし」
「・・・」

半纏はつゆりの一言に口を閉ざす。
反論なんて出来ない。
何せその通りだったからだ。

彼女も自分も人の形はしているが人間ではない。
だから人外。



そんな半纏の思考を他所に、つゆりはふとある考えを思い付く。
それと同時に、あくどい笑顔を浮かべる。
半纏は残念ながら身長差の加減と、彼女が丁度俯いていた所為でそれに気付く事はなく。
そして。


「よし、半纏今からちょっくら会いに行こうじゃないか」
「・・・は?」
「後球磨川君も連れて行こうか」
「・・・待て何故そうなる」
「そうした方が面白いと神様がお告げをしたからさ」
「・・・・・・」


神になるスキル、『過身様ごっこスペックオーバー』を持っているくせに何言っているんだと半纏は突っ込んでやりたくなったがいつもの如く黙殺されると分かっていた為、半纏は無言を貫いたのだった。



  △▼△



「でーは皆サーン!
今渡した資料を無駄にする事なく、頑張ってチョーダイ!」
「お、おお・・・」
「分かりまし、」

トキヤの最後の言葉を言うよりも早く遮ったのはたった一人の声。
しかもそれはこの場には存在しない筈の、女性の声だった。


「どうやらあの時よりも成長したようだね、早乙女君。
昔の君を知っているだけに感慨深いなぁ」
「!?」
「え、」

音也達が声の主―――艶やかな黒髪を靡かせた侵入者兼不審者は晴れやかな微笑を浮かべている。
その後ろには何故か反転している空色の髪を持つ男と彼女の手により首根っこを掴まれている黒髪の少年が。


色々突っ込みたいところだがまず彼女達は誰なのか。
というかいつから此処にいた?

誰か教えてくれ。切実に。


「OH!誰かと思えばMiss安心院ではありませんか!
お久しぶりデスネ!」
「わっはっはっは、何年ぶりかな早乙女君。
すっかり大きくなって、流石の僕も此処まで成長するとは思っていなかったよ」
「イエイエ、ユーに比べたらミーなんてまだまだデース!
Miss安心院だけでなくMr不知火まで・・・、Miss安心院、この少年はどちら様デスカー?」

早乙女の視線が徐に黒髪の彼に視線を向ける。
其処には依然、首根っこを掴まれている所為で青ざめており息も絶え絶えな少年の姿が。

・・・そろそろ離さないと死ぬのではないだろうか。
音也達は誰に言われるでもなく自然と心が一つになった瞬間だった。

「おおっとそうだったね。
ほら球磨川君、君の出番だよ。
何寝ているんだ、まだ昼頃だぜ?しゃきっとしないと」
(((いやいや原因はお前だ!!)))

「『・・・』『げほっ』『安心院さん酷いよ!』
『いくら僕でも流石に怒るよこの仕打ち!』」
「君が僕にした仕打ちに比べると結構軽いと思うんだけどな」
「『それはそれ!』『これはこれ!』『・・・って』
『うわー』『日之影君と同じ位おっきいね!』
『おおっと僕の事だよね?』『僕は球磨川禊だよ!』」

邪気の無い笑顔、を球磨川は見せた筈だった。
しかし音也達は逆の印象を植えつけられた。
何故かは分からない。

ただただ胡散臭いというか気味が悪いというか、そういう負の印象を。
問答無用で叩き込まれたような。

「・・・いやいやオッサン!」
「社長、この人達は一体、」
「つーかどっから出てきたんだよ!?」
「ドアが開く音なんてしませんでしたよねぇ?」
「ああ・・・」
「ボスの反応からして示し合わせてきた訳じゃなさそうだけど・・・」

つゆりは冷笑にも似た微笑を浮かべる。

・・・カラフルな彼等に少し似ているな。

「僕は安心院つゆり。ただの平等なだけの人外だよ。
因みに後ろに居るのは不知火半纏―――"ただ其処にいるだけの人外"だ。
気にしなくて構わないよ」

『・・・・・・』


構う!構うよ!
あれか人見知りの究極バージョンか!!


何処から突っ込んで良いのか皆が言葉を持て余していたが、先に口を開いたのはやはりというか那月だった。


「つゆりちゃんっていうんですかぁ!
うわぁ可愛いです!ぎゅうってしても良いですか?」
「僕のことは親しみを込めて安心院さんと呼びなさい。
未だかつて僕にそんな事を尋ねてきたのは有史以来君が初めてだよ・・・うん君の力は強いし遠慮しておこうかな」
「お人形さんみたいでぎゅうってしたいのに・・・」
「おい那月流石に初対面でそんな事を言うのは、」
「Mr四ノ宮、彼女はスペシャールビッグな人デース!
故にぃ、発言には気を付けてチョーダイ!」

那月に続いて今度は早乙女の爆弾発言。
その言葉の端々にも色々突っ込みたい事は山程あるがそれよりもまず解明したい事がある。


「彼女が何者なのかよく分からないがそれよりも、」
「貴女方は一体何処からこの部屋に入ってきたんです?
いえ、というより"人外"と先程も仰ってましたがそれは、」
「『うーん』『いきなり"人外"だって言われたら確かにそう思っちゃうよねぇ』」
「球磨川さん?もその"人外"なの?」
「『うん?』『あはは!』『赤髪君面白い事を言うねえ!』
『確かに僕は散々気味が悪いって言われるけど人間だよ!』
『世界で一番弱い』『ただの人間だ』」

けらけらと笑う球磨川、微笑を浮かべたまま言葉を発さないつゆり、依然背を向けたままの半纏。
戸惑いと困惑ばかりが胸中に渦巻く中、ただただ音也達は彼女達を見つめるのだった。

  一般人と人外と規格外と

一周年企画第一弾はアルコ様に捧げます、お待たせしました!
先輩も出そうと思いましたが無理でした。
誰かが空気と化するので(汗
こ、こんな感じで宜しかったでしょうか?企画に参加して下さり有難う御座いました!

20130811